第118話《余韻》
眩しい光が視界を満たした。
石の扉が開き、模擬ダンジョンの外へと続く風が吹き抜ける。
ナユは一歩外に出て、胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
「……終わったのです」
太陽の光が頬を照らす。
汗を拭いながら空を見上げると、心の中に静かな達成感が広がった。
観測台では試験官達が次々と記録を確認している。
そして、赤髪の教官――ガルドナが腕を組みながら歩み寄ってきた。
「見事だった、ナユ=ハルメリア。お前の判断力、冷静さ、どれも一流だ」
その声に、ナユはぴしっと背筋を伸ばした。
「ありがとうございます、教官!」
ガルドナは短く頷くと、笑みを浮かべた。
「だが、気を抜くな。試験に合格しても、これからが本当の冒険の始まりだ。“生きる力”を学ぶのは、ここから先なんだからな」
「はいなのです!」
はっきりとした返事に、周囲の試験官達が思わず笑みをこぼした。
ガルドナはそれを見て、満足そうにうなずく。
「よし。……お前なら、きっとやっていける。明日の朝には合格者の発表が出る。それまでしっかり休め」
そう言い残し、教官は背を向けて去っていった。
その背中を見送りながら、ナユは深く息をついた。
(……やり切ったのです。お父様、お母様、セバスチャン、ミナ、先生、リカちゃん……皆の教えを、ちゃんと形に出来たのです)
指輪がきらりと光を返した。
その瞬間、心の奥で微かな声が響く。
『……同期率、安定。ミラ、再起動完了』
(ミラ!?大丈夫なのです!?)
『問題ありません。観測精度、以前より向上。学園環境への適応を確認しました。ナユ、次の段階へ進む準備が整いました』
(次の段階……?)
『はい。あなたの中にあるスキルを、次の段階に昇華する為に、二つの新しいスキルが必要です。《演算》と、《記録》』
(演算と、記録……なのです?)
『そう。思考を加速させる“演算”と、全てを残す“記録”。その二つが揃えば、あなたは“次の扉”を開く事が出来ます』
ナユは胸に手を当て、小さく微笑んだ。
「……わかったのですミラ!なんかワクワクしてきたのです!」
空を見上げると、夕陽が校舎の屋根を金色に染めていた。
風がやさしく髪を揺らす。
心の中に、新しい期待が膨らんでいく。
「今日の記録:学園都市での実技試験、全て終了!ガルドナ教官から“合格”をもらったのです!そしてミラが再び目を覚まし、《演算》《記録》という新しいスキルの必要性を教えてくれたのです。これを得たら、きっと“何か”が完成する気がするのです。……日報完了!」




