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第105話《修練》

第二章ラスト!!

 朝の風が屋敷を包み、光が庭の芝を照らしていた。

 その中央で、ナユは一人、息を整え、両足を踏み締める。


「――《ブースト》、六重展開!」


 風が唸り、光が脚に宿る。

 身体が軽くなり、芝が一瞬沈む。

 安定した魔力循環。

 だが、ナユの視線はその先を見据えていた。


「……まだ行けるのです。もっと――!」


 息を吸い込み、魔力を更に解放する。


「《ブースト》、十二重展開ッ!!」


 光が一気に膨張した。

 身体中に走る衝撃。

 筋肉が悲鳴を上げ、骨が軋む。


『肉体負荷、限界値超過。損傷率上昇中――!』


「だいじょうぶ……!《レイ・ヒール》、常時維持なのです!」


 癒しの光が同時に流れ込む。

 皮膚の下で熱と冷が交錯するような感覚。

 魔力の波に合わせて、呼吸も整える。


 ナユは額の汗を拭い、空を見上げた。

 雲の切れ間から差す光が、まるで試練の続きを照らすように見えた。


 傍らの机には、バルドランが残した魔導書。

 ページが風に揺れ、そこに小さく文字が記されている。


『魔法は心、身体は器。器が壊れれば、心も砕ける』


 その下には、リカリーネの丸っこい筆跡で、

 「がんばれナユ!」と書かれていた。


 ナユはふっと笑う。


「リカちゃん……先生。わたし、頑張るのです」


 再び両手を広げ、光を集める。

 身体強化だけでなく、“身体を理解する”ための修行。

 サバリネとの戦いで学んだ、痛みの意味を思い出していた。


「魔法だけじゃ、守れない時もあるのです。だから、わたしは――強くなるのです!」


 その声に反応して、白銀のハクと黒狼クロが駆け寄ってきた。

 二匹の瞳が、主人の決意を確かめるように光る。


『訓練再開を確認。安全限界を一〇%拡張します』


「ありがとう、ミラ。限界を超えるのです!」


 光が再び彼女を包み、庭が眩く輝く。

 小さな身体が放つ魔力は、もはや幼子のものではなかった。


 その光景を、屋敷の影からミナが静かに見守っていた。


「……お嬢様。私も頑張ります!!」


 ミナから発せられるのは通常の人間では確かめる事が出来ないレベルの隠された身体強化魔法であった。

 それは、主に隠れて修行した成果であったりする。


 また、別の所からナユを見つめる男。

 セバスチャンもまた、隠れて修行していた。


「お嬢様……お嬢様の見様見真似ですが、身体強化の常時発動と、気配遮断魔法の常時発動までは来られました……これでお嬢様達を今まで以上に守る事が出来る……」


 2人の忠臣が常人の成長速度の限界を幾重も越えた修行方法をやってるとは、ナユは知らずにいた。


 風が吹き抜け、魔導書のページが一枚、音を立ててめくれた。


「今日の記録:修行再開! 《ブースト》十二重はまだ危ないけど、《レイ・ヒール》をかけながらなら少しずつ慣れてきたのです!バルドラン先生の魔導書に“魔法は心、身体は器”と書いてあったのを見て、またやる気が出ました!リカちゃんの落書きも見つけて、なんだか力が湧いたのです!もっと強くなって、みんなを守れるように! ……日報完了!」




 ――そして、時計の針は進み、ナユは6歳に。

次回、第三章《学園都市編》!!


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