↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
104/438

第104話《転輪》///コードZ:Episode.01《目覚めし者》

 午後の教室。

 陽だまりの中で、一人の少年が机に突っ伏していた。


「……日比野、また寝てるよ」


 前の席の女子が呆れたように笑う。


 黒板の文字はぼやけ、教師の声は遠い。

 少年――日比野ひびの ぜんは、今日も夢の中を漂っていた。


 将来の夢もなく、努力も嫌い。

 ただ、何となく日々を過ごしている。

 そんな「普通すぎる高校生」だった。


(……あと五分だけ……)


 半分眠ったままそう思った、その瞬間。

 教室の空気が、急に凍った。



「……え?」


 空気が揺れる。

 黒板がきらめき、床一面に光の模様が走った。


 眩しさに目を細める。

 気づけば、机も椅子も浮かび上がっていた。

 教室の中央に――青白く輝く陣。


 教師の声が悲鳴に変わる。

 生徒たちが叫び、窓ガラスが砕け散る。


「う、うそ……!なにこれ!?」

「助けて!!」


 善は立ち上がろうとするが、足が動かない。

 身体を縛るような“何か”が、全身を絡め取っていた。


 その時、耳の奥に声が響いた。


 ──《……召喚陣……?》


 知らないはずの言葉。

 けれど確かに理解出来た。


「……誰だ、今の声……?」


 頭の中に、何かが流れ込む。

 剣を振るう腕。

 血の匂い。

 神域の光。

 紅の瞳の“敵”。


 そして、最後に見た――眩い閃光。


『……ゼノア・オルディス……』


 その名が脳裏に響いた瞬間、全身が焼けるように熱くなった。


「う……ぐっ……あ、頭が……!」


 崩れ落ちた善の瞳に、青と白の光が混ざり合う。

 視界が反転し、心の奥で何かが目を覚ます。


 記憶が、蘇る。

 剣を掲げ、闇を裂いた勇者の記憶。


「……俺は……ゼノア……?」


 呟きと同時に、光が一層強くなる。

 生徒達の姿が消え、床が崩れ落ちる。


 ──『もし再び相まみえる時が来たら、その時は……俺の手で終わらせてやる。』


 遠い記憶の声が、耳の奥で囁いた。


 善は、目を見開いた。

 光が世界を呑み込む。


「――」


 声なき叫びは、光の中に溶けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。