↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
103/438

第103話《余響》

 闇に沈む王の間。

 魔王が去ったあと、玉座の前には一本の剣だけが残されていた。


 黒布に包まれたそれは、静かに光を漏らしている。

 聖剣ルミナリス

 かつて勇者ゼノア・オルディスが握り、神域を照らした剣。

 今は、闇の王の所有物として封じられている。


 その刃先が――微かに震えた。

 まるで、遠い記憶を呼び起こすように。



 ……光と闇が交錯する大地。

 神域セレスティア


 勇者と魔王が相対していた。

 空は割れ、地は焦げ、あらゆる祈りが崩れ落ちていく。


 魔王が放つ漆黒の魔弾が大地を穿つ。

 それでも勇者は、静かに前へ進んだ。


「……ゼノア・オルディス。まだ立つか」


「立つさ。立たなきゃ、意味がない」


 魔王の炎が再びうねり、世界を覆う。

 その中で、勇者は剣を構えた。


「お前の“光”は、創造の理そのもの。だが、我の“闇”は終焉の理。どちらが上か、今ここで証明しようぞ!」


「違う」


 勇者の声は、穏やかだった。

 だが、その剣先は確かに輝いていた。


「俺の光は“創る”為のものじゃない。壊す為でも、癒す為でもない」


 彼は小さく微笑み、剣を横に掲げた。

 空気が震える。

 四つの属性――火、水、風、地――の流れが交わり、ひとつの円環を形づくる。


「この力は――“極光属性オーロライト”。四大の干渉点を重ねた均衡の光。創造でも破壊でもない。調律の力だ」


 魔王の眉がわずかに動く。


「調律、だと?」


「世界を壊すお前の“闇”を、静める為の力だ」


 勇者は大地に膝をつきながらも、剣を高く掲げた。

 血が滲む掌を握りしめ、祈るように呟く。


「ルミナリス……最期まで、共に行こう」


 その瞬間、聖剣が白金の輝きを放つ。

 空が裂け、天地の境界が反転した。

 極光が奔り、魔王の胸を貫く。


 炎も闇も、その光に呑まれて消えた。


 ――だが、光の中で勇者は立ち尽くしていた。

 自身の命をすべて燃やし尽くしながらも、最後まで笑っていた。


 「もし再び相まみえる時が来たら、その時は……俺の手で終わらせてやる」


 言葉と共に、彼の肉体が崩れ落ちる。

 聖剣が地に突き立ち、音もなく光が消えた。



 現在。

 王城の闇の中、封印された《ルミナリス》がわずかに震える。

 刃の奥に、まだ消えぬ記憶の光が灯る。


 静かな声が、誰もいない広間に微かに響いた。


「……勝ったのは俺じゃない。ただ、“世界”を残しただけだ」


 そして光が消える。


 魔王の闇に染まった聖剣の奥で、

 確かに一つの“息づかい”が続いていた。


 それはもう、勇者のものではなかった。

 だが――確かに、勇者が見た“明日”を覚えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。