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アルディナの魔力  作者: Z.P.ILY
第五章 疾風のレクイエム

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253/255

第27話:浮かび上がる魔導士

《20,000PV 突破!!》

第三章を終え、おかげさまで20,000PVを突破しました。

たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。

まだまだ冒険は続きます。引き続き皆様に楽しんでいただけるように、毎日少しずつ、サクッとアップしていきます。

よろしくお願いいたします!


**********


●主人公:アーヤ・アーデン

 彼女はアルディナ王国の王都アルディナで、神殿の職務にあたる神官。以前は巫女だったが、その力を見込まれ神職試験を経て神官となった。

 夫と子供二人を家族とし、仕事と家庭を両立するキャリアウーマン。清楚で真面目だが、心に秘めた好奇心と、誰にも言えない夢がある33歳である。

 太陽の神子として覚醒し、世界を作り変えるために、神が作り出した六魔王を導く宿命を持つ。


●ミラ・フィローネ

 アーヤが目をかけている後輩巫女。快活で素直な性格であり、神殿内の人間関係にも明るい。アーヤを姉のように慕う。巫女としての霊的な力や知識は持っているが、まだ未熟で成長過程。ショートの鮮やか赤い髪がカワイイ22歳。

 風の一族との関係がありそう。


●グレイ・リヴァント

 神殿騎士団の副長を務める高身長のイケメン38歳。

 筋肉質で短く整えられた黒髪は、鋭い青い目の視線を際立たせる。

 戦闘では冷静沈着で真面目な性格からは想像できない強さと熱さを発揮する。神殿では最も頼れる存在。

 アルディナの伝説の剣士の末裔。


●エリス

 王都の西に位置する街マクホカタの山の麓リアケーアにすむネコの獣族。白毛に赤茶の耳、しっぽの先も赤茶色。

 明るい性格でいつもおちゃらけているが、特別な獣族にのみ与えられる能力〈未来視〉を持つ。青氷色の左目と金色の右目、能力の違うオッドアイが獣族の未来を見る。時の魔王アッシャガの力を得て、時の継承者となった。好物はフィッシュバーガー。


●イアン・セリウス

学術都市ガネリーホに籍を置く、年齢不詳の研究者。

薄紫の長髪と灰色の瞳を持ち、常に静かな観察者として振る舞う。古代魔導理論や魔力の構造に精通し、その知識は一部の学者の間で知られているが、彼自身の過去や真の目的はほとんど語られない。物語の要所で現れ、核心を突く言葉を残す謎多き存在。見かけによらず熱い気持ちを持つ。


 ――王都アルディナ・神殿騎士団団長室

 夕刻、重厚な石壁に囲まれた部屋の中で、沈黙だけが長く垂れ込めていた。

 机の上には、山のように積まれた報告書、調査記録、王城から貸し出された古文書、神殿保管庫の閲覧記録……あらゆる資料が散乱している。

 だが、そのどれにも、求める名はない。

 

 ーーシャムス・リゴーン

 百年前、アリオン王の時代に暗躍したという “契約魔導士” 。

 その名を知る者は王城にも神殿にもほとんど存在せず、痕跡すら残されていない。


 「……本当に、この世に存在してたのか?」


 報告書を閉じながら、ルディアスが大きく息を吐いた。

 彼の額には珍しく疲労の色が濃い。

 いつもは能天気にすら見える剛腕隊士の表情にも、いまは影が落ちていた。

 対面にいるグレイもまた、黙り込んでいた。

 羊皮紙に刻まれた古い文字をひとつひとつ確認しながら、その瞳には明らかな苛立ちと焦燥が漂っている。


 「……百年前の王城記録をすべて洗ったが、 “シャムス” に該当する名はゼロ。王立魔導管理局の文献にも記載はなく、神殿側の禁書庫にも影も形もない」


 グレイは低く呟き、指先で机上の資料を弾いた。


 「そのくせ、ふんわりとした形跡が、それらしい雰囲気だけ残されている。アリオン王治世期、他の封印に関わった者の中に“契約魔導士”としか書かれていない記録がある。名前を伏せる意味があるほどの人物……だが、それを誰が伏せたのかは不明だな……」


 「間違いなく、意図的に消してるな…」


 ルディアスが腕を組み、壁にもたれる。


 「王城も神殿も、これだけ探して何も出ないなんて普通じゃない。百年前に誰かが『存在を抹消した』と考えるほうが自然だ」


 「だとしても、理由がわからない以上、動きようがない」


 グレイは小さく息をつき、目を閉じた。

 完全に行き詰まっていた。

 昨日からずっと、王城と神殿の記録室を往復し、時には騎士団の古老にも話を聞き、残っているあらゆる資料を漁ってきた。

 しかし、まるで誰かが百年前の記録を、ひとつ残らず削除したかのような “空白” だけが残る。

 

 ――シャムス・リゴーン

 その名前は、まるで闇の中に浮かんでは消える霧のようだった。

 グレイは机に置かれた銀のカップを手に取り、水を一口飲んだ。

 冷たさが喉を通り過ぎるが、頭は少しも冴えない。


 (まだ何か、見落としているのか……?)


 焦燥が胸を締めつけた。

 そのとき、"コン、コン" 重厚な木扉が静かに叩かれた。

 ルディアスが顔を上げる。


 「……誰だ?」


 返答はない。

 しかし、扉の向こうから漂う気配に、グレイの瞳がゆっくりと細められた。


 「入れ」


 扉が静かに開く。

 淡い紫がかった長髪。

 落ち着いた灰色の瞳。

 古風な装束の上に薄い外套を羽織り、どこか漂う異質さは、場の空気を懐かしさで包んだ。


 「イアンじゃないか!」


 静かな微笑を浮かべながら、彼は騎士団団長室へと足を踏み入れた。

 

 「……お久しぶりですね、グレイさん。ルディアスさん。ご多忙のところ失礼いたします」


 声は穏やかでありながら、部屋の空気を一瞬で変えるような存在感がある。

 ルディアスが目を丸くした。


 「イアン!?お前、なんでここに……」


 「呼ばれたのですよ。もっとも、呼んだ覚えがあるのは、あなた方ではなく、アリオン王かもしれませんが ……」


 「お前……アリオン王のことを、何で……」


 イアンは静かに目元を細め、懐から封のされた書簡を取り出した。

 どこか懐かしさを感じさせる所作だった。

 グレイは席を立ち、軽く会釈する。


 「もしかして、ガネリーホの学術院に依頼していた調査の件か?」


 「えぇ。シャムス・リゴーンをはじめとした百年前の契約魔導士について、学術院で調査依頼を受けたのが私でした……ただ、まさかグレイさんが依頼主とは……」


 イアンはわずかに肩をすくめた。


 「不思議ですね。私はしばらく、別の研究に関わっていたのですが……学術院が私にこの調査を回したと聞いた時、正直驚きましたよ……まるで “私が来ることを知っていた” かのようです」


 「偶然……ではない、ということか?」


 ルディアスが眉をひそめる。


 「ええ。私自身、少し奇妙だと感じています。この調査依頼が回ってきた日、私は別件でガネリーホに帰還したばかりでしたから。まるで、誰かが私を『そこに呼び寄せた』ように、ね」


 イアンの淡々とした声に、部屋の空気がわずかに緊張する。

 グレイは眉間に指を当てた。


 「学術院側に心当たりは?」


 「いいえ。向こうも『たまたま』と言ってました。ですが、その “たまたま” という言葉をそのまま信じるほど、私は楽天家ではありません」


 イアンの瞳に、ごく淡い光が走った。


 「……こういう巡り合わせを、世界は “縁” と呼ぶのでしょうね」


 静かな声音だったが、その底に不可思議な響きが隠れていた。

 彼の言葉が、どこか “未来を見ている” かのような気配を含んでいたからだ。

 イアンは机の上の資料の山を軽く眺める。


 「それに……あなた方が探している人物。シャムス・リゴーン。実は私も、別の理由で調べていたのです」


 グレイとルディアスの視線が同時に向けられた。


 「……タダイの件か」


 グレイが静かに口を開いた。

 イアンはうなずいた。


 「はい。タダイ……学術院が今なお “観測対象”として記録し続ける、大気の魔王です。彼は大気そのものの循環や古代術式の名残に干渉できる存在。過去の異常現象や術式の発生源を解析する際、必ずと言っていいほどその名が参照されます。百年前の契約魔導士に関する術式の “起源” を学術院が調査した際も、いくつかの記録がタダイの観測報告に紐づいていました。その調査の過程で、どうしても一人だけ、出自も足跡も異質な者が浮かび上がったのです。それが、"シャムス・リゴーン" でした」


 ルディアスが息を呑む。


 「学術院でもシャムスが……!」


 「直接的ではありません。ただ、彼の研究メモには “契約魔導士体系の欠番” としてシャムスの存在が示唆されていたのです」


 グレイはわずかに瞳を細めた。

 学術院にまで影を落とす “欠番の魔導士” 。

 存在そのものが意図的に消された人物。


 (……だが、イアンが来たということは)


 グレイの胸に、久しく感じていなかった手応えが宿り始めた。


 「つまり、何か掴んだということか」


 イアンは静かに書簡を指先で持ち上げた。


 「えぇ……ひとつだけ、確かな情報が見つかりました」


 ルディアスが身を乗り出す。


 「本当か!?」


 イアンは歩み寄り、静かに書簡をグレイへと差し出した。


 「ここから、光が差し込みます。長く閉ざされていた百年前の影に……」


 淡い微笑を浮かべて、彼は言葉を結んだ。

 部屋に満ちていた重苦しい空気が、少しずつ変わっていった。

 シャムス・リゴーン……闇に包まれていたその名に、ようやく一筋の光が届く。

 イアン・セリウスの来訪は、まるで運命が一本の線を引くように、グレイたちの調査を新たな段階へと導いていくのだった。

 グレイは、イアンの報告を聞きながらも、意識は別の一点へと引き戻されていた。


(……ミラ。おまえが離れてから、胸の奥がずっとざわついている。戦場でも、どんな窮地でも揺らがなかった心が……おまえのこととなると簡単に乱れる。どうしてだ。どうして、こんなにも……)


 瞼の裏に浮かぶのは、無邪気な笑顔。

 風に揺れる淡い髪。

 その一つひとつが、今は痛いほど愛おしい。

 守りたい。

 理由なんて、いらない。

 騎士としての誓いよりも先に、ひとりの男として、彼女の傍に立ちたいと思ってしまう自分がいる。

 それを認めた瞬間、グレイの胸の奥では何かが大きく、まるで嵐のように決定的に動いた。


 (……待っていろ、ミラ。必ずこの手で守ってみせる…)

「アルディナの魔力 第五章 疾風のレクイエム」をお読みいただきありがとうございます。

 今後の展開や、執筆における参考とさせていただきますので、是非、評価をお願いいたします。

 誤字や脱字がありましたら、遠慮なくフォームよりご報告ください。

 また、本作品へのご意見やご要望につきましては、メッセージ等で随時受け付けてます。皆様からの忌憚のないご意見等をお待ちしてます!

                   Z.P.ILY

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