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アルディナの魔力  作者: Z.P.ILY
第五章 疾風のレクイエム

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251/257

第25話:風の恋

《20,000PV 突破!!》

第三章を終え、おかげさまで20,000PVを突破しました。

たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。

まだまだ冒険は続きます。引き続き皆様に楽しんでいただけるように、毎日少しずつ、サクッとアップしていきます。

よろしくお願いいたします!


**********


●主人公:アーヤ・アーデン

 彼女はアルディナ王国の王都アルディナで、神殿の職務にあたる神官。以前は巫女だったが、その力を見込まれ神職試験を経て神官となった。

 夫と子供二人を家族とし、仕事と家庭を両立するキャリアウーマン。清楚で真面目だが、心に秘めた好奇心と、誰にも言えない夢がある33歳である。

 太陽の神子として覚醒し、世界を作り変えるために、神が作り出した六魔王を導く宿命を持つ。


●ミラ・フィローネ

 アーヤが目をかけている後輩巫女。快活で素直な性格であり、神殿内の人間関係にも明るい。アーヤを姉のように慕う。巫女としての霊的な力や知識は持っているが、まだ未熟で成長過程。ショートの鮮やか赤い髪がカワイイ22歳。

 風の一族との関係がありそう。


●グレイ・リヴァント

 神殿騎士団の副長を務める高身長のイケメン38歳。

 筋肉質で短く整えられた黒髪は、鋭い青い目の視線を際立たせる。

 戦闘では冷静沈着で真面目な性格からは想像できない強さと熱さを発揮する。神殿では最も頼れる存在。

 アルディナの伝説の剣士の末裔。


●エリス

 王都の西に位置する街マクホカタの山の麓リアケーアにすむネコの獣族。白毛に赤茶の耳、しっぽの先も赤茶色。

 明るい性格でいつもおちゃらけているが、特別な獣族にのみ与えられる能力〈未来視〉を持つ。青氷色の左目と金色の右目、能力の違うオッドアイが獣族の未来を見る。時の魔王アッシャガの力を得て、時の継承者となった。好物はフィッシュバーガー。


●イアン・セリウス

学術都市ガネリーホに籍を置く、年齢不詳の研究者。

薄紫の長髪と灰色の瞳を持ち、常に静かな観察者として振る舞う。古代魔導理論や魔力の構造に精通し、その知識は一部の学者の間で知られているが、彼自身の過去や真の目的はほとんど語られない。物語の要所で現れ、核心を突く言葉を残す謎多き存在。見かけによらず熱い気持ちを持つ。


 ――八十年前。

 王都アルディナから遠く離れたサミトピアの片隅。

 のどかな村には、季節の風がゆるやかに吹き抜けていた。

 春の入りを告げる風は柔らかく、庭の白い花々に触れながら、若草の香りとともに村の通りを過ぎてゆく。

 ーースーベル・ティオ・アルディナス

 その名に王族の血が混じっていることを、この村の誰も知らない。

 そして彼女自身も、その名で呼ばれることはなかった。

 預けられた家で、彼女は “スーベル・アネミル” として育てられた。

 普通の少女として。

 普通の娘として。

 ――そして、普通に恋をした。


 「……スーベル、今日も、あの子と会うのか?」

 

 夕暮れの小さな石橋のほとりで、スーベルはゆっくりと振り返る。

 そこには、彼女の生まれた日からずっと寄り添ってきた人間、いや、“人” と呼ぶには少しだけ異なる存在。

 風の守護者、ガルーダのシモーリ。

 魔力で人間の姿を模した彼は、歳を取ったのか取っていないのか分からない不思議な気配を纏う。


 スーベルは頬を赤らめたまま、視線をそらす。


 「ち、違います……!ただ、一緒にお話ししていただけで……」


 「スーベル、二十にもなって話しだけ……というのは、さすがに苦しい言い訳だな」


 「うぅ……シモーリ、意地悪……」


 「意地悪じゃないだろ。君が嬉しそうなのを見るのが、ただ好きなだけさ」


 シモーリは微笑む。

 その微笑みには、寂しさと誇りと、そして長い年月をともにしてきた者にしか持ち得ない、深い慈しみが宿っていた。

 スーベルの目元が少し陰る。


 「……わたし、そんなに……嬉しそうに見えた?」


 「あぁ、とても。春風のようだ」


 その言葉に、スーベルの胸の奥がじんわりと温かくなる。

 スーベルが恋をしたのは、同級生の青年 "リネオ" という名の優しい青年だった。

 穏やかで、気が利いて、スーベルが人と違うことをして困っていたときも、「気にしなくていいよ」と言って笑ってくれた。

 彼はスーベルが “普通の子” ではないことを知らない。

 そして、伝えるわけにもいかない。 

 だからこそ、胸の奥に刺さる不安はいつも小さく疼いていた。

 シモーリはスーベルの横に並び、風の流れをそっと感じる。


 「……スーベル。そろそろ話をしなければと思っていた」


 「……え?」


 「君が恋をして、誰かと未来を歩こうとしている今だからこそ、話すべきことがある」


 スーベルの心臓が、ひとつ強く跳ねた。 

 それは、幼いころからなんとなく感じていた “境界”。

 自分と周囲の人との間にある、言葉にならない秘密。

 シモーリはゆるくコートを揺らしながら、静かに続けた。


 「スーベル。君は、風の加護を受けた子。そして君の血は、未来につながる大切な血脈……」


 「……わかってるわ。わたし……」


 スーベルはそっと胸に手を当てた。

 心臓の鼓動と一緒に、いつも風が揺れている。

 彼女の呼吸に合わせ、木々の葉がわずかにざわめくこともある。

 十歳の頃、風の精がスーベルにだけ聞こえる声で囁いた。

 十五歳の頃、感情が高ぶると室内に風が巻いた。


 「リネオには……言えないよね」


 その言葉に、シモーリは小さく頷いた。


 「あぁ。君が誰かと結婚して、子どもを授かっても…… “風の血” のことは、決して伝えてはいけない」


 スーベルはゆっくり目を閉じる。


 「……わかってる……だって、そうじゃないと、普通に生きられない」


 風の民、古い契約に縛られた血。

 王家が古くから求めてきた力。

 そして時に、争いの理由になってしまう力。

 シモーリは真っ直ぐにスーベルを見る。


 「君は普通の子として育った。笑って、泣いて、怒って、恋もした。それが私の願いだった。ただの “風の器” ではなく、ちゃんと一人の女の子として生きてほしかった」


 「……ありがとう、シモーリ。わたし、本当に幸せだよ」


 スーベルは穏やかに微笑んだ。

 だが、その笑みにはわずかな翳りがある。


 「でも……リネオには言えないんだよね。『わたし、風の加護を持ってるの』って」


 「言えない。言えば彼を巻き込む。そして、君の子どもに宿るかもしれない風の加護が、いつか誰かに狙われる可能性もある」


 スーベルの長いまつげが震えた。


 「……わたし、あの人と普通に生きたい。普通に笑って、普通に子どもを産んで、普通にお母さんになりたい……だけど、ずっと秘密を抱えたまま……」


 彼女の声は小さく、風に溶けるようにかすれていた。

 シモーリはそっとスーベルの肩に手を置く。


 「それでも……君なら、愛せる。秘密を抱えたままでも、家族だって幸せにできる。君の “風の優しさ” はきっと彼を包んでくれる」


 スーベルは涙をこらえるように空を見上げた。

 夕焼けに染まる雲が、風に流されていく。


 「わたし……怖いよ。いつか “普通じゃない” って気づかれたらって。リネオに嫌われたらって」


 「嫌われない。リネオは君を見ている。君がどんな力を持っているかなんて、関係ない」

 

 スーベルは小さく息を飲む。

 シモーリの眼差しは、まるで母ウイネリアのように深く、そしてあたたかかった。


 「スーベル。これから先……私は君に会うことが少なくなるかもしれない」


 「……え?」


 シモーリの言葉は静かだったが、風の流れが変わった。


 「君はもう十分に強く、優しく、生きていける。君が私から離れていくことは、とても寂しい。でも、それは、とても良いことなんだ」


 スーベルの瞳が潤む。


 「シモーリ……わたしを置いていくの?」


 「置いていくわけないだろ。ただ、君が歩く未来に、私は必要なくなるというだけだ」


 そっと風が吹き、二人の髪を揺らす。


 「スーベル。私はこれからもずっと……君を見守っている。私の “守る役目” は私の命が尽きるまで終わらない……」


 「……ほんとうに?」


 「あぁ、ほんとうだ。君が恋をして、結婚して、子どもを産んで……そしてその子がまた未来へ風を届けていくのを、ずっとそばで見てるよ」


 スーベルの頬を涙が伝う。


 「シモーリ……ありがとう……」


 シモーリは微笑みながら、スーベルの頭を優しく撫でた。


 「お礼を言うのは、こっちの方だ。普通なら、こんな気持ち、こんな幸せを味わうことはできなかった。君のおかげだ、スーベル。……大丈夫。君なら必ず幸せになれる。どれほど風が揺れても、君の心は折れない。私が保証する。」


 風がふわりと舞い、スーベルの涙をそっと乾かしていった。

 スーベルは、ふと風の動きに気づいた。

 見慣れた庭の木々がそよぎ、どこか懐かしい気配が流れ込んでくる。

 胸の奥の “風の血” が、それと共鳴するように微かに震えた。


「アルディナの魔力 第五章 疾風のレクイエム」をお読みいただきありがとうございます。

 今後の展開や、執筆における参考とさせていただきますので、是非、評価をお願いいたします。

 誤字や脱字がありましたら、遠慮なくフォームよりご報告ください。

 また、本作品へのご意見やご要望につきましては、メッセージ等で随時受け付けてます。皆様からの忌憚のないご意見等をお待ちしてます!

                   Z.P.ILY

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