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アルディナの魔力  作者: Z.P.ILY
第五章 疾風のレクイエム

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250/258

第24話:残された禁記録

《20,000PV 突破!!》

第三章を終え、おかげさまで20,000PVを突破しました。

たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。

まだまだ冒険は続きます。引き続き皆様に楽しんでいただけるように、毎日少しずつ、サクッとアップしていきます。

よろしくお願いいたします!


**********


●主人公:アーヤ・アーデン

 彼女はアルディナ王国の王都アルディナで、神殿の職務にあたる神官。以前は巫女だったが、その力を見込まれ神職試験を経て神官となった。

 夫と子供二人を家族とし、仕事と家庭を両立するキャリアウーマン。清楚で真面目だが、心に秘めた好奇心と、誰にも言えない夢がある33歳である。

 太陽の神子として覚醒し、世界を作り変えるために、神が作り出した六魔王を導く宿命を持つ。


●ミラ・フィローネ

 アーヤが目をかけている後輩巫女。快活で素直な性格であり、神殿内の人間関係にも明るい。アーヤを姉のように慕う。巫女としての霊的な力や知識は持っているが、まだ未熟で成長過程。ショートの鮮やか赤い髪がカワイイ22歳。

 風の一族との関係がありそう。


●グレイ・リヴァント

 神殿騎士団の副長を務める高身長のイケメン38歳。

 筋肉質で短く整えられた黒髪は、鋭い青い目の視線を際立たせる。

 戦闘では冷静沈着で真面目な性格からは想像できない強さと熱さを発揮する。神殿では最も頼れる存在。

 アルディナの伝説の剣士の末裔。


●エリス

 王都の西に位置する街マクホカタの山の麓リアケーアにすむネコの獣族。白毛に赤茶の耳、しっぽの先も赤茶色。

 明るい性格でいつもおちゃらけているが、特別な獣族にのみ与えられる能力〈未来視〉を持つ。青氷色の左目と金色の右目、能力の違うオッドアイが獣族の未来を見る。時の魔王アッシャガの力を得て、時の継承者となった。好物はフィッシュバーガー。


●イアン・セリウス

学術都市ガネリーホに籍を置く、年齢不詳の研究者。

薄紫の長髪と灰色の瞳を持ち、常に静かな観察者として振る舞う。古代魔導理論や魔力の構造に精通し、その知識は一部の学者の間で知られているが、彼自身の過去や真の目的はほとんど語られない。物語の要所で現れ、核心を突く言葉を残す謎多き存在。見かけによらず熱い気持ちを持つ。


 ーー王城記録室

 王城の廊下に戻った瞬間、湿り気のある冷気が離れていき、代わりに石造りの空気がわずかに温度を取り戻した。

 記録室の扉は、重い金属が沈んだ音を響かせて閉ざされる。

 グレイとルディアスはしばらく無言のまま、階段を上がった。

 足音だけが、王城深部の静寂に淡く反響する。

 やがて、警護隊の詰所に戻る頃になって、ルディアスがようやく口を開いた。


 「なぁ、グレイ」


 「なんだ」


 「……あれ、本当に “残ってて”よかったんだろうか?」

 

 グレイは立ち止まる。

 薄闇の中、青い瞳がわずかに光を反射した。


 「……お前も気付いたか」


 「そりゃあな。王家の “不都合な記録” ってのは普通、燃やされる。跡形もなく。なのに、あれほど核心に触れる文献が、百年もそのまま残っていた。違和感しかない……」


 ルディアスの声には、疑念よりむしろ確信が混ざっていた。

 グレイは短く目を閉じ、息を吸い込む。


 「あの記録は、 “残された” んじゃない。“残した者がいた”。そう考えるのが自然だろう……」


 「俺もそう思う……」


 二人は詰所の扉を押し開けた。

 城の地下とは違い、この部屋は明かりも暖かく、外套を脱ぐとようやく肩の力が抜ける。

 ルディアスは椅子にドサッと腰を下ろし、大きくため息を一つついた。


 「ふぅーっ!……百年前の協力者……か。王家とは別の “誰か” がアルディナス家に味方して、記録を残した者がいた。そう考えるしかないな」


 グレイは机の上の地図を脇へ寄せ、記録室から持ち出した写筆用の紙を広げた。

 禁記録そのものは持ち出せない。

 だが、見た範囲で再現できる部分はすべて書き留めてある。

 紙の上には、いくつかのサインの模写があった。

 その中の一つ、角の欠けた半月、そして小さな風紋を組み合わせた奇妙な印章。

 ルディアスが眉をしかめる。


 「なぁ、そのサイン……何なんだ?王家の紋章でもないし、宮廷魔術師の印にも似てない」


 「……オレも見覚えはない。だが、あれは “書いた者の署名” 。つまり記録が自然に残ったわけじゃなく、“意図的に保管された” ということだ」


 グレイは指で印章をなぞる。

 紙の質感を通して、ただの模写であるにも関わらず、底冷えするような気配が指先にまとわりつくような錯覚に陥った。


 (あれほどの禁記録。王家の威信を揺るがす内容にも関わらず、焼かれずに残されている。残した者は、いつか必ず誰かが読むと “信じていた” )

 

 その意図が、胸に重く沈み込んだ。

 ルディアスは机に肘をつき、低く呟いた。


 「百年前の協力者……そいつはアリオン王側についた奴ってことか?魔王カザズレイキとの共闘を、表向きはわざわざ隠したまま記録を残した……?」


 「いや。むしろ逆かもしれない」


 「逆?」


 グレイは紙束をめくりながら言う。


 「アリオン王の死は、シャムスの術に呑まれた結果だった。そして封印には "指輪“ 、儀式の鍵となる王家の血……あまりにも王家に都合が悪い」


 ルディアスがうなずく。


 「だから、本来は全部 “なかったこと” にするべきだった。それなのに燃やされずに残ったってことは……」


「 “王家の意志ではない力” が、記録を残した」


 ルディアスは椅子の背にもたれかかった。


 「……それってつまり、百年前の時点で、王家以外の何者かが封印に関わってたってことか?」


 グレイの瞳が鋭さを帯びる。


 「そうかもな。大気の魔王タダイの封印……シャムスの呪術……紅月の魔王カザズレイキ……そして、アリオン王の死」


 ページの端を押さえた指先が、わずかに震えた。


 (もしその協力者が、“封印の真実を後世に伝える必要がある” と判断したなら……今、封印が揺らいでいることも、想定していた可能性がある)


 ルディアスはしばらく沈黙していたが、ふと顔を上げた。


 「……なぁ。じゃあひとつ聞くが…」


 「なんだ?」


 「その協力者……つまり記録の保管者は、“人間” か?」


 空気がひやりと冷える。

 グレイはゆっくり首を振った。


 「それはわからん。魔王カザズレイキの側近だった可能性もある……シャムスに連なる何者か、あるいはまったく別の存在かもしれん」


 「魔族ってこともありえるのか……」


 ルディアスは背後の壁を見たままぼそりと呟いた。

 仮に魔族であれば、人の国の記録を残した理由はいくつも考えられるが、その一つ一つが、どれも簡単に受け止められる内容ではなかった。

 グレイは紙を束ね、魔灯の明かりの下に置いた。


 「……まず、サインの主を推測する。名前こそないが、文体と筆致には癖があった。筆圧も強く、魔術師特有の墨の乗り方をしている。宮廷魔術師とは違う。もっと……旅の魔導士に近い」


 「となると……シャムスと同時代の魔導士か?」


 「可能性は高い。まずはシャムスについて調べる必要があるか……」


 グレイは立ち上がり、壁に掛かった外套を手繰り寄せた。


 「やっぱり、鍵はあいつが握っている……か」


 「あぁ。アリオン王に『封印術』を教え、完成と同時に王を死に導いた魔導士。その術式の構造も、存在の経緯も不明。あれほどの禁術を扱う者が、“ただの人間” のはずがない」


 ルディアスは眼を細めた。


 「シャムスの名前が残ってる資料って、王城もしくは神殿にあったか?」


 「いや、見たことがない。調べては見るが、何もでてこない可能性の方が高いだろう……」


 ルディアスは舌打ちする。


 「まぁ、そうだろうな……ってことは、王家にとって都合の悪い情報だから消されたってことか……」


 「あるいは、シャムス自身が “消した” 可能性もある。記録を残さずに旅をし、名を変え、姿を隠すことに長けていたかもしれん。ただの契約魔導士だったとは思えない。……それともう一つ、重要な点がある…」


 グレイの声が低く落ちる。


 「シャムスは、“魔族とも人間とも契約できた”……ということだ」


 ルディアスの表情が硬くなる。


 「……なるほどな。魔王カザズレイキがアリオン王の死に “沈黙した” 理由。シャムスが術を与えた理由。そして……あの禁記録を残した協力者の正体も、繋がってくるわけか」


 グレイは頷いた。


 「シャムスを追えば、必ず “封印の真実” と “協力者の正体” に辿り着く。……そして、ミラの血の意味にも」


 少しの沈黙のあと、二人の間で、ただ魔灯の炎だけが揺れた。

 ルディアスがゆっくりと椅子から立ち上がる。


 「よし。じゃあ当面の方針は決まりだな。……シャムスの痕跡を追う。そして、百年前の術師の足跡をたどる……」


 グレイは深く頷いた。


 「古い魔導書、巫覡ふげきの記録、そして……ガネリーホの学術院にも照会を出す。シャムスに関する記述が一行でもあれば、そこから辿れる」


 「風の聖域にも、伝承のひとつくらい残ってるかもしれんな。ミラ……そしてアーヤにも話す必要があるか?」


 「……それはまだ早い。まず確証を得る。彼女たちを余計に不安にさせるわけにはいかない」


 グレイの声には、決意と……どこか痛みがあった。

 ルディアスはそれを理解しているように、にやりと笑った。


 「じゃあ任務は二つってわけだな。一つは、ミラを守ること。そしてもう一つは……百年前の亡霊を暴き出すことだ」


 「そうだな」


 グレイは剣帯を締め直し、静かに息を吐いた。


 「歴史が動き始めている。放っておけば、あの封印……この国さえ揺らぐ……」


 窓の外では、夜の風が城壁を撫でていた。

 冷たく、鋭く、どこか不吉な気配を孕んだ風。

 タダイ封印の揺らぎは、すでに始まっている。

 グレイはその風を受けながら、心の底で静かに誓った。


 (アリオン王が命を賭して守ったものを……今度はオレが守る)


 その刹那、まるで遠い時代からの警告のように、詰所の魔灯の炎が一瞬だけ強く揺れた。


「アルディナの魔力 第五章 疾風のレクイエム」をお読みいただきありがとうございます。

 今後の展開や、執筆における参考とさせていただきますので、是非、評価をお願いいたします。

 誤字や脱字がありましたら、遠慮なくフォームよりご報告ください。

 また、本作品へのご意見やご要望につきましては、メッセージ等で随時受け付けてます。皆様からの忌憚のないご意見等をお待ちしてます!

                   Z.P.ILY

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