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アルディナの魔力  作者: Z.P.ILY
第五章 疾風のレクイエム

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第23話:冷酷な決断

《20,000PV 突破!!》

第三章を終え、おかげさまで20,000PVを突破しました。

たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。

まだまだ冒険は続きます。引き続き皆様に楽しんでいただけるように、毎日少しずつ、サクッとアップしていきます。

よろしくお願いいたします!


**********


●主人公:アーヤ・アーデン

 彼女はアルディナ王国の王都アルディナで、神殿の職務にあたる神官。以前は巫女だったが、その力を見込まれ神職試験を経て神官となった。

 夫と子供二人を家族とし、仕事と家庭を両立するキャリアウーマン。清楚で真面目だが、心に秘めた好奇心と、誰にも言えない夢がある33歳である。

 太陽の神子として覚醒し、世界を作り変えるために、神が作り出した六魔王を導く宿命を持つ。


●ミラ・フィローネ

 アーヤが目をかけている後輩巫女。快活で素直な性格であり、神殿内の人間関係にも明るい。アーヤを姉のように慕う。巫女としての霊的な力や知識は持っているが、まだ未熟で成長過程。ショートの鮮やか赤い髪がカワイイ22歳。

 風の一族との関係がありそう。


●グレイ・リヴァント

 神殿騎士団の副長を務める高身長のイケメン38歳。

 筋肉質で短く整えられた黒髪は、鋭い青い目の視線を際立たせる。

 戦闘では冷静沈着で真面目な性格からは想像できない強さと熱さを発揮する。神殿では最も頼れる存在。

 アルディナの伝説の剣士の末裔。


●エリス

 王都の西に位置する街マクホカタの山の麓リアケーアにすむネコの獣族。白毛に赤茶の耳、しっぽの先も赤茶色。

 明るい性格でいつもおちゃらけているが、特別な獣族にのみ与えられる能力〈未来視〉を持つ。青氷色の左目と金色の右目、能力の違うオッドアイが獣族の未来を見る。時の魔王アッシャガの力を得て、時の継承者となった。好物はフィッシュバーガー。


●イアン・セリウス

学術都市ガネリーホに籍を置く、年齢不詳の研究者。

薄紫の長髪と灰色の瞳を持ち、常に静かな観察者として振る舞う。古代魔導理論や魔力の構造に精通し、その知識は一部の学者の間で知られているが、彼自身の過去や真の目的はほとんど語られない。物語の要所で現れ、核心を突く言葉を残す謎多き存在。見かけによらず熱い気持ちを持つ。


 ――王都アルディナ 王城最上階 “聖明宮”

 そこは、王城の中でも限られた者しか踏み入れぬ "密議の間" でもあった。

 夜気を閉じ込めたような青銀の壁面が静かに光を反射し、天井に吊られた月光のシャンデリアが、冷ややかな白を床に落としている。

 その中央、玉座より幾分低い位置に置かれた謁見台で、一人の男が跪いていた。

 ――黒装束リーダー レガード・ダンフォール

 仮面は外しているが、その眼光は鋼のように冷たく、しかし深い影を宿していた。

 王座には、王国の頂点に立つミルガ・ヴェル・アッグリンブル。

 齢五十を超えたとは思えぬ壮健さ、その瞳は常に獲物を探す猛禽のように鋭い。

 王は短く息を吐いた。

 

 「……四度目?……よく顔を出せたな…」


 低く落ちた声が、宮殿の空気を震わせる。

 レガードは頭を垂れたまま、簡潔に報告した。


 「はっ!面目ございません……第四次 “風の聖域” 制圧作戦も失敗に終わりました。また、ミラ・フィローネの確保も果たせませんでした…」


 静寂が落ちた。

 王は、手にしていた銀の杖をゆっくりと玉座の床へ打ち付けた。

 甲高い音が鳴り響き、聖明宮の壁面がかすかに震える。


 「四度だ。四度もだぞ、レガード……?」


 王の声は、冷たい怒気を押し殺していた。


 「風の一族の守護が厄介なのは理解している。だが……何故、失敗が続く?」


 「今回、想定外の要因が複数ありました」


 レガードはわずかに顔を上げる。

 その目は敗北の色ではなく、冷徹な計算を含む光だった。


 「第一に、アーヤ・アーデンが現場に介入してきたこと。第二に……」


 レガードは言葉を切る。

 脳裏に焼き付いたあの光景を思い返す。


 「 “獣王形態” へと覚醒したエリスという獣族の存在です」


 王の眉がぴくりと動く。


 「……獣王だと?……たかが獣族が?」


 「はい。伝承級の狂牙進化バーサークドライブ。そして時の魔王の力、それらが想定外の強さで、ミラを奪還されました。我らの精鋭であっても、まともに対処できる力ではありません」


 王は深く息を吸い、玉座の肘掛けに手を置いた。


 「……レガード。お前には常に最善の成果を期待している。そのお前ですら、止められぬ者がいたというわけだ」


 王は冷笑を浮かべた。

 それは賞賛ではなく、失望とも嘲りともつかぬ色を持っていた。


 「黒装束は王家直属の影であり、秘密裏の武力。そこにどれだけの力を注ぎ込んでいるか……わかるか?……それが失敗を重ねればどうなるか……」


 王の声が低くなる。


 「 “整理” せねばならぬ……か……」


 謁見台にひざまずくレガードの背筋が、わずかに強張った。

 だが彼は表情を変えず、淡々と口を開く。


 「お待ちください、陛下。まだ手立てはございます」


 「……聞こう」


 レガードは深く一礼し、静かに告げた。


 「最終手段として、ミラ・フィローネの家族を捕らえ、人質とする」

 

 聖明宮の空気が凍りついた。

 王の視線が殺気を帯びる。


 「……家族を、か?」


 「はい。ミラ自身は“聖域”に守られ、警戒も強まっております。正面から捕えるのは、もはや困難。ですが、家族を拉致すれば、彼女は必ず動きます。ミラは善良で情の厚い少女。家族を救うためなら、命令に従う」


 レガードの目は静かだった。

 淡々と残酷な算段を語る声音は、まるで温度を持たない氷のように冷たい。


 「我々は彼女を手中に収めさえすればいい。そして、タダイの封印を解くための鍵。その力を使わせる」


 王はしばらく黙し、玉座の上からレガードを見下ろした。


 「……お前は、その女が従うと確信しているのか?」


 「はい、ミラは強いが、決して冷酷ではない。家族を犠牲にする決断は、間違いなく取れません」


 王の目が怪しく光る。


 「レガード。お前の残酷さは、私にとっては便利だが、一歩間違えばただの暴走だ」


 「暴走ではありません。あくまで “最も確実な策” を提示しているに過ぎません」


 王は静かに立ち上がった。


 「……よい。だが、実行の是非はまだ決めぬ」


 レガードは深く頭を下げる。


 「では……私はその “決断” をお待ちしております」


 「下がれ。しばらく内密に潜伏していろ。次に失敗した時、お前自身の立場もどうなるか分からぬぞ」


 レガードは微動だにせず、淡々と応えた。


 「覚悟はございます」


 そして影のように退出していった。

 重い扉が閉ざされる。

 静寂が戻った聖明宮に、別の気配が生まれた。

 王の背後に続く小廊下から、二人の人物が現れる。

 王妃・セルネア、そして王子・スメリア。

 王妃は白磁のような肌と銀の瞳、氷の貴婦人と呼ばれた気品を漂わせていた。

 王子は母譲りの冷たい表情を持ち、若き政務官として非情な決断を厭わないことで知られている。

 王妃は足音をほとんど立てず王の隣へ進み、静かな声で言った。


 「……陛下。レガードの案、悪くはありませんわね」


 王子が続く。


 「むしろ現状では最も確実かと。ミラ・フィローネを捕らえられなければ、“封印計画” そのものが滞ります」


 王は二人を見回した。


 「だが……家族を巻き込むのだぞ?」


 王妃は薄い唇をわずかに歪めた。


 「巻き込まれたくないなら、王家の計画に逆らわなければよろしいのです。風の民の血を受けた稀代の器。タダイの封印を解かせるために必要な存在ですもの」


 王子が冷たい目で言う。


 「家族など、替えのきく駒です。ミラさえ確保できればそれで良い。聖域の風族が反発しようと、問題ありません。彼らの不満など一時的なものです」

 

 王は沈黙した。

 やがて、低く、呟くように言う。


 「……この王座に座る者の判断としては……正しいのだろうな」


 王妃の手が、そっと王の肩に触れる。

 その指先は驚くほど冷たかった。


 「陛下。今動かねば、風の聖域は完全に敵へと傾きます。アーデンという神官、獣王となったエリス……想定外の存在が増えている。フィローネを早く掌中に置かねば、情勢は王家に不利となりましょう」


 王子も深く頷く。


 「レガードの案、実行すべきです」


 王はゆっくりと天井のシャンデリアを見上げた。

 そこには王家の象徴たる紋章が静かに輝いている。


 「……ならば、決めねばな」


 王妃と王子がわずかに微笑む。

 その微笑は、氷の刃のように静かで、残酷だった。

 アッグリンブル王は深いため息をつく。


 「フィローネの家族を……“確保”せよ」


 静かに発せられたその言葉が、夜の城の奥に沈んでいった。

 そして運命は、さらに残酷な方向へ動き始める。

 ――レガードの密命

 王の前から退出するとき、レガード・ダンフォールは一度も顔を上げなかった。

 だがその歩みは、影のように静かで、迷いの欠片すらなかった。


 (……決まった。これで私の次の手が打てる)


 重厚な聖明宮の扉が背後で閉ざされる。

 途端に王家特有の冷気が肌から遠のき、廊下の空気がわずかに温度を取り戻したように感じた。

 長い息を一つ吐き、レガードは腰に差した小さな黒水晶を指先で軽く叩く。

 レガード直属、“黒装束”の通信具だ。


 「……全員、集合だ。第二区画・転位室へ」


 声を潜ませた呼びかけは、黒水晶を通して城内外に散らばる部下たちへ静かに届く。

 返答はない。

 だがそれでいい。

 声なき従順こそ、影としての礼儀だった。

 レガードは王宮の奥、禁足区域に近い転位室へ向けて歩き出した。

 人払いをされた通路に、抑制された靴音が鳴る。

 そして、その内側では、静かに焦燥の火が燃え上がっていた。


 (四度の失敗……これ以上は、王家も黒装束も許さない)


 (次に失敗すれば、私の首は斬られる……それで済めばまだ良いほうだ)


 王の最後の言葉が耳に残る。


 『次に失敗したとき、お前自身の立場もどうなるか分からぬぞ』


 “立場” という柔らかな表現に隠された意味を、レガードはよく理解していた。

 影の責務は、影として消える覚悟を常に求められる。

 失敗が続く影など、王家にとっては不要の存在だ。


 (だからこそ……確実性のある策をとる。家族を確保し、彼女を誘導する。それだけでいい)

 

 王妃と王子が背後でどんな笑みを浮かべていたか。

 思い返せば、背筋にわずかな冷気が走る。

 レガードはそれを振り払うように、転位室の扉を押し開けた。

「アルディナの魔力 第五章 疾風のレクイエム」をお読みいただきありがとうございます。

 今後の展開や、執筆における参考とさせていただきますので、是非、評価をお願いいたします。

 誤字や脱字がありましたら、遠慮なくフォームよりご報告ください。

 また、本作品へのご意見やご要望につきましては、メッセージ等で随時受け付けてます。皆様からの忌憚のないご意見等をお待ちしてます!

                   Z.P.ILY

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