思いがけない訪問者
ふと目が覚めると、外は雨だった。時計は9時を差しているにも関わらず いつもより暗かった。華琳がいつもよりのんびりと眠っていたのは、今日はお店は定休日だったからだ。
「ん…珍しいな、雨降ってる…。…そうだ、ちょっと出かけてみようかな。」
予定を入れずのんびりと過ごそうと思っていた華琳だったが、久々の雨に出かけようという気分になっていた。
大きく伸びをしてベッドから降りて洗面にある鏡を覗くと、湿気が多いからか、寝癖がひどかった。
「直すの大変そうだなぁ…どうしよう、シャワー浴びちゃおうかな?」
思ったより跳ねている髪の毛を触りながらどうしようか考えていると、玄関のチャイムが鳴った。
「え?誰だろ…っていうか、どうしよう、髪の毛…。…でも、待たせちゃうよりは出た方がいいよね。」
何も約束していなかったはず…と思いつつ 薄いカーディガンを羽織って玄関のドアを開けると、そこにはよく知っている人がいた。
「おはよう、華琳ちゃん。えっと…起きたばっかりかな?」
「…こ、幸風さん…?おはようございます、こんな格好でごめんなさい…!」
「あっ、いや、こっちこそ早い時間にごめんね。その…久しぶりの雨だから、一緒に散歩でもどうかな、って思って。」
そういうと幸風は照れくさそうに はにかんだ。
その笑顔に急に心拍数が上がっていくのを感じながら 華琳は急いで答えた。
「そうなんですね、ちょうど私も今出かけようかと思っていたところなんです、急いで支度しますね。…あっ、そういえば幸風さんはハーブティーってお好きですか?」
「ハーブティー?好きだよ、でも、どうして?」
「いい香りの紅茶が入ったから、ハーブティーを作ってみたんです。誰かに味見してもらおうと思ってたんですけど…どうでしょうか?」
「なるほど、そういうことか。じゃあ、お邪魔しようかな?」
「ありがとうございます!リビングで待っててください、すぐに用意しますね。」
そういうと 華琳はキッチンの方へ向かい、しばらくして 紅茶の入ったポットと小さなクッキーが乗っている皿を持って そっと歩いてきた。
「いい香りだね…。クッキーも美味しそうだな。」
「えへへ、ありがとうございます。あと少ししたら飲めると思うので、それまで待っててくださいね。私はその間に着替えてきます!」
「わかった、私のことは気にしないでゆっくり着替えておいで。」
「気にしちゃいますよ〜…出来るだけ早くします!」
ゆっくりでいいと言ってくれたが 華琳は出来るだけ早く着替えを済ませた。
幸風と出掛けた時に買ってもらった服とネックレスを選んで 思い出して赤くなって…ばたばたと支度をする華琳は忙しそうで、とても楽しそうだった。