相合傘
「幸風さん、遅くなってごめんなさい、お待たせしました!」
ひどかった寝癖を苦戦して直してリビングに戻ると、幸風が嬉しそうに笑った。
「大丈夫だよ、気にしないで。…あ、そのネックレス、つけてくれたんだ。ありがとう、とても似合ってるよ。」
「そ、そうですか?よかった…!」
幸風に褒めてもらい 照れて目線を彷徨わせていると、カップが空になっているのを見つけた。
「えと、紅茶…どうでしたか?」
「うん。とてもいい香りだし きつ過ぎなくて美味しいよ。もっと飲みたいくらいだ。クッキーも合ってていいね。」
「よかった、ありがとうございます!茶葉たくさんありますし、よかったらいかがですか?」
「いいの?じゃあ、帰りに貰っていこう。…あ、支度終わったみたいだし、行こうか。」
「はい!…あ、傘壊れちゃってたんだっけ、どうしよう…!」
数週間前、再び配達をしに出かけた時、傘が折れてしまったことを華琳は すっかり忘れていた。
慌てて代わりの傘を探していると、幸風が声をかけた。
「私の傘に入るかい?大きめだから多分入れるよ。」
「えっ、でも悪いですよ…。」
「大丈夫だよ、遠慮しないで。」
「…じゃあ、お願いします。」
相合傘…?と気付いた時には幸風が外に出ていて、意識しないように頭を振って 傘に入れてもらった。
歩いていると想像していたより地面が柔らかく、足が滑ってしまいそうだった。
「華琳ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫ですよ…わっ!」
「おっと…気を付けてね?」
「ご、ごめんなさい…!」
バランスを崩して転びかけたところを、幸風がさっと支えてくれた。
思っていたより大きな体にドキドキしてしまって、真っ赤になって俯きながら離れた。
幸風の様子が気になってこっそり顔を上げると、同じように少し顔を赤くした幸風が 手を差し伸べていた。
「早かったよね、ごめんね。危ないから、ゆっくり歩こうか。」
「…ありがとうございます。」
ゆっくりと手を取ると、幸風は照れたようにそっと笑って歩き始めた。さっきより歩幅が狭いことに幸風の思いやりを感じて、再び赤くなり始める顔を隠した。




