↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

反撃、敵地へ

目が覚めてからは色々と話を聞かされた。


あの穴を通して、同じ日本の言わば”裏側”に繋がってること。

瑞希と葵は元々こっちで生活していたこと。

俺は研究素材として優秀なため飼い殺される前提で実験と称して色々と恐ろしいことをされていたこと。

裏側の俺を助けるために連れ出し、表のほうで生活していたこと。

瑞希が薬なしでは生きれない身体だということ。


最近いろんなことがありすぎてすぐに全てをありのまま受け入れることは難しかった。

しかし現実は現実だし、時間の問題だと言われた。


それよりもなによりも…

瑞希に恐怖心を持っていた自分が情けない。

全て俺のための行動だったというのに、変に詮索して、人間性を疑って…。


葵も全て知っていた。

責める気はない。

二人揃って療養中のようだが、早く良くなってほしい。


そしてお礼を言いたい。

知らないところで色々とありがとう、と。


「よく休めましたか?」


椅子で考え事をしていると後ろから遠慮がちに声をかけられた。

彼はこの俺を保護してくれた集団のリーダー格で、研究熱心な日本の非道徳的なやり方に反発しているレジスタンスをやっているという。


「はい。おかげさまで」


この人の協力の元、瑞希をサポートしつつ間接的に俺を保護していてくれたらしい。

本当に頭が上がらない。


「それはよかった」


にこやかな笑みを返される。

優しそうな人だ。


「瑞希さんから聞いてると思いますが、あなたには特別な資質があります。

研究所は今でもあなたを狙っているんです」


一転して真剣な表情になる。


「はい、一応。でも急に言われても実感が沸かないっていうのが本音です」


親身になってくれてる。それだけでなんだか心強い。


「でも、なんで俺…と葵だけ?他にもいるんじゃないですか?」


「それが…DNA鑑定でも適合者はあなた方2名だけなんです。両親はすでに他界されてるようですので」


言い辛そうに結論を下される。

そうなのか…。


これからどうすればいいんだろう。


話では、表側にも裏側にも俺の居場所はないように感じる。

どこにいても捕まってしまえばモルモット。

それは、もちろん嫌だ。


ビービービー

「火災が発生しました。従業員は速やかに建物の外へ…」


な、火事!?

外ってどこだ。俺ここの構造全然知らないんだけど!


警報が鳴ったかと思うと館内アナウンスが流れ出していた。


とりあえず誰かについていこうと人を探す。


「「先ほどのアナウンスは誤報です。慌てないください。繰り返します…」」


あ、またアナウンス…。

誤報なのか。良かった、心から…。


「かえで!大変!」


瑞希だ。大丈夫なのだろうか。

大変って、聞いてなかったんだろうか。

さっきのは誤報で…


「葵ちゃんがどこにもいないの!」


「なに!?」


ど、どういうことだ?

葵はほぼ寝たきりの状態だった。自分で動けるとは到底思えない。


「やられましたね」


さっきのリーダー。


「このパニックに乗じて葵さんを狙ってたみたいです。

ここの研究員ではない者が紛れ込んでいました」


そんな…!


「ということはもしかして」


「ええ、やつら”ファントム”の仕業でしょう」


聞いた内容では。

件の非人道的な研究所を抱えているのが、内閣総理大臣その人。

悪い噂は聞くが、実際に粛清されない、実体の不確定さからそう呼ばれているという。


「まさか直接乗り込んでくるとはね…」


「こちらも乗り込むしかないでしょうね」


あまりにも急な展開でついていけてない部分もあるが、とにかくそうするしかないらしい。


ーーー。


研究所に向かうにあたって、多くの戦闘要員で研究所周囲を包囲し、少数での内部突貫に方針は定まった。

俺、瑞希、リーダー、武装兵2人で葵の元へ向かうことになる。


リーダーを筆頭に、建物内の間を縫うようにして隠密性を保ったまま進んでいく。


しかし…。


「誰もいないな」


そう、ここまでで警備の一人も見ていないというのはさすがに何か思うところがある。


「そうですね。チャンスです」


疑わずか、それともわかっていてかポジティブなリーダー。

施設内部のルートを暗記していると豪語するだけあって、素晴らしい先導で短時間で実験ブロックに辿り着くことができた。


このブロックにもやはり人がいない。

不安にはなるが、好機と見てこの中をみんなで手分けして探そう。


そう意気込んだところだった。

それぞれがバラバラになったところで、何者かに突如背後から襲われた。

後頭部一発。

声を上げる間もなく気を失った。


ーーー。


気づくと見知らぬ個室にいた。

後頭部に鈍痛が走る。


なんなんだ、いきなり…。


『楓さん』


起きるや否や、どこかのスピーカーから声がきこえる。

これは…リーダー?


『先に伝えておきますと、妹さんのほうはダメでした。

実験には役に立ちません。どうやら資質だけでうまくいくわけでもないみたいですね』


なに…なにを。


『あ、なので返しますね。もう必要ありませんので』


部屋のドアが開く。

何者かに押される形で部屋の中に入ってきた。

そのまま崩折れる。


「葵!」


手荒な真似をしてくれる。


「大丈夫か、あお…」


葵の顔を見た途端、頭の中が真っ白になった。


焦点の定まらない瞳、だらしなく弛緩した口元、目から流れる血…。


信じられなかった。嘘だと言って欲しかった。

どうして、どうしてこんなーー。


葵が、壊れてしまった。


体が震える。

手先が、膝が、情けないぐらいに笑っていた。

自分の無力さを痛いぐらい痛感した。


これが、絶望か…。


ーそして。

彼の意識は遠くなる。


「 ΟΜΟΙΟΣΤΑΣΙΣ 」


右目だけが虚ろな、感情の色がなくなってしまったような無機質なものへと変わる。


視覚/人格の切り替え。


視覚/感覚の向上。


視覚/視力の変質。


変質。変質。変質。


ーーー人の身で選択しなかった世界を視ることができるという、世界視。

誰もがその冗長性に異を唱えた。


選択しなかった世界を視るー言わば予見するーということは、リアルタイムで常に天文学的な数字の計算式を計算し続けるということだ。

その結果の座標の、誰が、どうやって、誰に、何をするのか。

それを99.999999%の割合で予測し決定付け、更には視覚化する。


つまり実際に見ているということになる。


ー未来を。


そんなことが可能かどうか。

その議論は必要ない。


今、ここに、特殊な網膜と稀有な処理能力を持った脳で実現しているのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。