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少年は一人でアコギを弾いていた。

 いつだって見つけるよ、君の場所は 僕しか知らない

 詩織をひき逃げした犯人は、すぐに捕まった。

 彼の名前はシャドウ・ブラウン。三か月ほど前に、日本にきたらしい。

 犯人の車についていた血痕のDNAと詩織のDNAが一致したこと、僕が犯人の顔をはっきり見たこともありすぐに裁判をすることになった。

 しかし、彼は裁判をした結果、無実となった。

 お母さんが言うには 

「悪い人だからお金の力でもみ消した」

ということだ。

 僕は、どうしても犯人が許せなかった。詩織を殺しておきながら謝罪の言葉一つ述べず警察につかまらなかった犯人が許せなかった。

 シャドウ・ブラウンがどうしようもなく憎くてたまらなかった。


 僕はまたいつもの場所にいったら詩織に会える気がして、一人でアコギを弾いていた。

 詩織が死んでから一か月近くたったのに、僕にはその事実を受け止められなかった。

 詩織が好きだった曲や賛美歌をいっぱい弾いていた。

 アコギを弾いている時だけは嫌なことを少しだけ忘れた。

 ふと拍手をしながら近づいてくる一人の少年の姿が見えた。

 思わず息をのんだ。

 彼は僕より少し小さいく五,六歳くらいに見えるが天使を見たと思うくらいとても綺麗な子だった。

 雪のように真っ白な肌に、青く透き通るような目。空を写し取ったようなきれいな青。

 そして輝くような金色の髪の毛。混じり気一つない金色は朝日のようにまぶしかった。

 こんな美しく完璧なものは初めて見た。

 写真でもこんなきれいな子は見たことがなかった。 

「とてもすばらしい音楽が聞こえてきたから思わずここまで来てしまった」

 絵本の中から出てきたような美少年に褒められて思わず緊張してしまった。 

「あ、ありがとう」 

 彼は人形のような笑みを浮かべてからしゃべりだした。

「僕の名前はエリック・ブラウン。たまに女の子に間違えられるけど男の子だよ」

 エリック・ブラウン……。

「シャドウ・ブラウンを知っている?」

「それは僕のパパの名前だよ。そんなことより君の音楽はとても素敵だね。もっと聞かせてよ」

 ドクリ、ドクリ、ドクリ。

 憎しみと驚きで胸が埋め尽くされていく。

 この少年はあのシャドウ・ブラウンの息子だった……。

 しかし悪いのは親であり息子には何の罪もない。

 僕は様々な感情を断ち切るかのようにアコギをエリックのために何曲も弾き続けた。


 彼は、日が沈みかけたころ僕に提案をしてきた。

「明日もこの場所で純也のアコギを聞かせて」

「うん」

 僕はエリックの提案にためらいもなくうなずいていた。

 エリックは去りかけるときに無邪気にしゃべりだした。ハープのように美しい声で残酷な言葉を紡ぎだす。

「そういえば、ここら辺で女の子が死んだらしいね。

まだ九歳だったみたいなのに本当にかわいそう」

「……そうだね」

 まだ九歳……。それをシャドウは奪った……。

 そして謝罪すらしなかった。

 再び自分が何かに支配されそうな感覚に陥りそうになったが必死に押さえつける。

「僕のパパは、信号を守らないバカな女なんて早死にして当然だって笑っていたけどね」

 そう言ってエリックも死んだ詩織をバカにするような冷たい笑みを浮かべる。

 違う!詩織は信号を守っていた。僕はちゃんと見ていた。

 けれども口から出たのは情けない声。

「そう……なんだ」 

 エリック・ブラウンはとても素敵な男の子だった。容姿だけではなくて、僕の音楽をいっぱい褒めてくれる心の優しい少年だった。天使みたいに素敵な男の子だと思った。

 もしも詩織の件がなかったら彼のことはとても大好きになれただろう。

 だけど……。

 シャドウ・ブラウンのひどい言葉だけは耳から離れなかった。


 読んでくださりありがとうございます。

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