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純粋な少女について

 枯れた頬に伝う誰かの涙 『just be friends』

 四月になり、辺りでは桜が咲き始めたがその日は雨が降っていた。

僕は、仕事室に閉じこもって一人である曲を奏でていた。

 詩織は、雨の音がするこの曲は好きだった。

 詩織の好きなものを僕も好きになり、君が愛したその音楽を僕も愛す。

 そしたらいつの間にか詩織の全てを好きになっていた。

 そのはずなのに……。

 頭に浮かぶのは、違う少女。

 僕は、すっかり変わってしまったな。

 自分の心境の変化に時の長さを感じた。

 自分だけ変わって忘れていくことに罪悪感が湧き上がってきた。

 思わずアコースティックギターを弾く手が止まった。

 その時、携帯電話が鳴った。

 昔から、電話が嫌いだった。

 ……電話は、僕が人を殺す時に利用した道具だからだ。 

 嫌な気分になりながら、しゃべりかけたとき耳をつんざくような声が聞こえてきた。  

「もしもし……」

「純也!今、大変なことになっているの。

 あなたが人殺しだということがばれた」

 ああ、マネージャーの赤城さんの声か。 

 ……彼女の話に思っていたよりも衝撃は受けなかった。

「……」 

「もう世間に大幅に流失している。

 否定することは、無理よ。記者会見でも開いたら印象がよくなるかもしれない」

 これからあなたをどうするか考え……」

「赤城さん。

 ほんとうにご迷惑をおかけしてすいません。

 今までお世話になりました」

「ちょっ……」

 赤城さんの言いかけた言葉を聞かず携帯の電源を切った。

 頭をよぎるのは詩織の言葉。

 

「この世には悪い人なんて一人もいないの。みんな本当はいい人たちなの。あたしは多くの人を救える人間になりたいな」


 違うよ、詩織。僕は悪い人だ。

 

 蔵平 詩織はとてもかわいらしく、素晴らしい女の子だった。

 教会に住んでいたせいか、彼女は誰よりも優しい愛を持っていた。

 どんな容姿であれ、どんな立場であれ誰かを見下してはいけない。

 詩織は困っている人がいたらためらいもなく手を差し伸べる少女だった。

 詩織のきれいさは、何よりも心のきれいさにあった。天使みたいに性格がいい子だった。

 彼女ほど心の美しい少女はきっとどこにもいなかっただろうと思う。

 その日は詩織に聞かせたい曲があった。難しい曲だったが、アコギを使って一か月ずっと練習をしていた。今までよりも練習しすぎたせいで指がボロボロになっていた。

 アコギをケースに入れて手で大切に持ちながら僕はいつもの場所に向かっていた。  

 あ、詩織がいる。

 今日は、白いワンピースを着ている。かわいい詩織は白いワンピースが町にいる誰よりも似合った。

 信号が青になるのをまって詩織が歩道を進み始めた。

 しかし大きな音がして少女は黒い車とぶつかって空を舞う。

 そして地面に落ちていく。

 

「詩織!」


 彼女の全身は血だらけで骨が見えている。

 運転していた金髪の男が視界に入る。

 黒い車は何事もなかったように去っていく。


「あ……あ……」

 きれいな詩織はもういない。

 目の前にあるのはボロボロになった少女の遺体。 

「うわぁああああ!」

 僕はどうすることもできずただ泣いていた。


読んでくださりありがとうございます。

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