何だか……バカな僕だった。
青空が眩しい
君がいる風景は
幸せのオーラ 溢れ出すの止まらないよ『コイノシルシ』
アメリカでは思っていたよりも早く用事が済んだ。
結婚相手に話しかけるときは、こう話せとマネージャーに教えられた。
「もしもし」
不機嫌そうな由良の声が聞こえた。
「ハロー。マイハニー」
勇気を振り絞ってアメリカ流の挨拶をした。何度も音楽を録音する機会でしゃべって自分の声を検査したため、とてもイケボに聞こえているはずだ。
由良さんは、僕にときめいてくれているだろうか。
「あなた誰?」
そう聞いてきたのは、由良さんだった。
「え……」
頑張って練習しすぎたせいで僕の声だと認識できなかったのだろうか。
今度は、日本語で呼びかけた。
「君の夫だよ」
「私、結婚なんてしていないけど」
「……」
これは確かに由良さんの声だ。ま、まさか僕は結婚をしていない人と結婚をしたと思い込んでしまうほど頭のおかしい人間だったのだろうか。
僕は……精神病院にでも行くべきか……。
何だか……心が折れそうだ……。もう死のうかな。
どうせ僕なんて……ただの頭かおかしい人間だ。死んだ方が、他の人間に迷惑をかけないからいいかもしれない。死のう。どんな死に方にしよう。首を吊る方法が一番他人に迷惑がかからないか……。
そう思っていたとき、また受話器の向こうから声が聞こえた。
「なんて、嘘よ。電話をしたらまず自分の名前を名乗りなさい。
私はオレオレ詐欺対策として純也が名乗るまで他人のふりをしようと思っただけよ」
僕は……ショックのあんまり心臓麻痺をおこすところだった。
まあ、まだ生きているからいいか。気を取り直して会話することにした。
「日本では時差の影響でクリスマスだね」
「……もう過ぎた」
何だか……バカな僕だった。
アメリカから帰った僕は由良さんとデートした。
由良さんには、桜ヶ丘 彰というハイスペックな幼馴染がいたらしい。
今日の夕ご飯の時に聞いたけど、イケメン、性格よし、お金持ち、学歴よしという完璧な人間らしかった。
彼とは由良さんとデートしているときにたまたま会った。
彰みたいな明確な比較対象がいることは辛かった。
痛かった。
由良さんは、彰のことをこう言っていた。
「彰は、東大を出て威張っている嫌な奴よ」
とうだい……。ああ、灯台のことか。灯台を出た奴は、偉いのか……。僕は、また一つ賢くなった。
けれども、彼に会った時のうれしそうな由良さんの笑顔が忘れられなかった。
あんな顔は知らなかった。
その日は、眠れなかった。
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