明日から出張に行ってきます
会いたくて
会いたくて
君への思い、涙そうそう
ある日、突然彼は宣言した。
「明日から出張に行ってきます」
「純也が……出張……。どこに?」
「ちょっとアメリカに」
……絶句してしまった。純也……アメリカ……。
「……生きて帰れるのかな……。純也って英語を話せたっけ?」
「僕は一度聞いた音楽は、忘れない。その能力を使って英語をマスターしました」
「バカなのに学習能力は、高かった。私をはるかに上回っている」
「ああ、でも読む方は全然だめです。
〝Non step bus〟を〝Non stop bus〟と間違えて何時間もバスを待ち続けた経験があります。『これに乗ってはいけないな』って思いながら」
「絶対に何かの英語の契約書にサインすることはやめて」
「はい、大丈夫です」
「もしかしたら少し遅くなるかもしれません。寄り道もするつもりなので」
「寄り道?」
「少し会いたい人がいるので」
「浮気?」
「いえ……浮気なんてしたら由良さんに殺されそうだから絶対にしません」
「別に殺さないけど。温厚な私が人を殺すわけない。
私が純也とその愛人を殺すわけない。
私はどこかの誰かと違って人を殺すような人間じゃないからね」
……『殺す』ばかり発言しているところが怖い。
由良さん以外の女性と会話できなくなりそうだ。
「……僕は……その被害者の家族に会いにいきたくて……。
ずっと会いたかったけれども、向こうに関する情報がなかなか手に入らなくて」
せめてお金を貯めたら真っ先に会いに行きたかった。
けれども……行先も連絡先も知らされていなかった。
世界トップクラスの探偵を雇って探してようやく連絡がついた。
と言っても……被害者の家族はとある事情から僕には会いたくないらしい。
〝とある事情〟は僕のせいでなく、とりあえず僕が一度会いに行ったときに話すと言っていたけれど……。
「日本に住んでいた人がアメリカへ移ったの?」
「はい。ようやく連絡がついたので……」
「そう。いってらっしゃい」
「行ってきます」
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