宵闇騒動〜あの子は、『天使』?〜
初めまして。見ていただいていた方、お久しぶりです。
よむらです。
この度、内容を全修正いたしました。
拙いですが、楽しんで見ていただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
「おいお前ら。この家に『天使』って居るだろ?『俺達』の間じゃ、有名な話なんだぜ?会わせてくれよ。」
男が言う。いや、これは交渉だ。
「『天使』、か。会ってどうするつもりだ?」
シオンが冷たく話す。
「決まってるだろ?この『お嬢ちゃん』と『天使』を交換してもらうんだよ。『天使』は俺らと一緒に来てもらう。その後の『天使』がどうなるかはまぁ…分かるだろ?」
下卑た笑いでシオンを見る男。シオンは少し苦しそうな顔になった。何を話しているかは彼女は知らない。しかし、シオンの表情からして…それはきっと、悪い意味なのだ。
ならば、なんとかしてサカキを助けなくてはいけない。彼女はそう思うが、どうすればいいのか分からない。考える、考える、どうすれば……。
ーーー不意に、彼女はサカキと目が合った気がした。
どうしてだろうか?なぜサカキは落ち着いて居られる?
美しいその子は、人形のように表情を変えることなくただそこに居る。
その瞳は、美しく光っていた。
ゆっくりと、少しずつ、月に雲の影が迫る。闇が皆を覆っていく。
けれど、ガラスのように透き通った空の色の瞳は、闇に呑まれることなく光っていた。
ーーー『綺麗な瞳。』ーーー
闇が呑み込んだのは一瞬だった。すぐに辺りは元の月明かりに照らされて戻った。
しかし、闇は、影は、サカキの足を掴んでいた。
そして、ゆっくりとサカキの身体を這い上がる。『お客様達』は気づいていない。
足から胴に来た。まだ『彼ら』は気づいていない。彼女は何が起きているのか分からない。
サカキの首に、顔に、真っ黒な手がかかる。そこでようやく『彼ら』は異変に気が付いた。
けれども、もう遅い。
影は闇となり、サカキの身体の全てを覆ってしまった。
そしてーーーー『溶けた』。
男は人質があっという間に闇に呑まれ、居なくなってしまったことに驚き焦った。
辺りを見回しても、見つからない。
「な、っ、なんだ?!どこに行きやがった?!」
男の焦りは増していく。
「落ち着け!『この家の者』だぞ?!きっと近くに…」
男性がそう声をかけたところで、不思議なものを見た。
焦り、冷静な判断がつかなくなっている男の足元の…『影』。影はゆっくりと男の背後で膨らみ始め、黒い人の形を成した。そして、そこから…手が、身体が、影から出てきた。人、だ。パーカーを着て、目元が見えぬほどフードを深く被っている『人』。それは、男の首に両腕をまわして後ろから抱きついた。
ーー彼女はなぜだか、あれはサカキではないのかと感じてしまった。
「ひっ?!」男は恐怖で声を上げる。必死に振りほどこうと勢いよく身をよじる。後ろに居た者は離れ、滑らかな動きでバク転をしながらシオンの隣に並ぶ。
そして、止まった勢いでフードが頭から降りた。
その髪はどこまでも白く、輝いていた。
「…大丈夫だったか?サカキ。」
シオンが優しく名を呼びながら尋ねる。サカキと呼ばれた者は、ゆっくりと頷いた。
やはり、サカキなのだ。
サカキはゆっくりと彼女の方へ振り返った。透き通ったガラスのように綺麗な空色の瞳と、また目が合った。しかし、見つめ合いは長くは続かなかった。
「おいおい、まさかそこに居るのは俺達が探していた『天使』だよなぁ?!ははっ!本当に居やがった!!」
男は信じられないといった様子であるのに、どこか嬉しそうに話す。
そして、続けてこう言った。
「アルビノのヴァンパイアだ!!」と。




