宵闇騒動〜ようこそ、『お客様』。さぁ、おもてなしを。〜
初めまして。見ていただいていた方、お久しぶりです。
よむらです。
この度、内容を全修正いたしました。
拙いですが、楽しんで見ていただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
ーーー『お客様』。客人。
その言葉は、彼女にとっては父と約束した、『六条家では言ってはいけない言葉』。
その意味を、今、彼女は知ることになる。
「……そうか。ようこそいらっしゃいました。」
ーー冷たい言葉だった。シオンからだ。優しい声音は変わっていないのに。彼女は、冷たく感じた。
すると、サカキは無言で男性にカーテシーをした。変わらず無表情だった。そして、姿勢を戻すとゆっくりと男性に近づいて行った。ーー案内をするのだろうか?当主、六条家の『お父様』に。
それは、一瞬の出来事だった。
サカキは男性の目の前まで近づいた。そして、
片足を、男性の顎に目掛けて振り上げた。蹴り上げたのだ。
男性は驚きながら、間一髪で蹴りを避けていた。が、サカキは蹴り上げた足を下ろしながら軸にして、反対の足を振り上げ男性の顔の側面を蹴った。
「ぐぅっ…!?」男性は少し呻いたが、すぐに体勢を立て直し、サカキから離れた。しかし、サカキはすぐに距離を詰め、蹴りを繰り出していく。
男性は防戦一方であった。
その様子を、シオンは冷えた目で見つめていた。リオンは顔を強張らせながらも彼女を守る体勢に入る。シオンも同様に、2人を守ろうと少し前に出ていた。
彼女はこの異様な光景をただ見つめるしかできなかった。
どうしてサカキは『お客様』を攻撃しているのか?美しい見た目から繰り出されているとは信じたくないほどの素早く強烈な動き。しかし、同時にまるで蝶の舞のような美しさも感じてしまった。
そのような猛攻の中で、男性は僅かな隙を見逃さなかった。攻撃に転じる。が、サカキはひらりと後ろに躱して距離を取った。男性と3人の間となる位置で止まる。
「……ははっ、驚いたな。俺はこの家の『お客様』だぞ?随分な『もてなし』じゃないか。この家はこれが挨拶なのか?作法なのか?」
焦りを隠せないながらも、男性は言う。
「申し訳ないな。六条家では、『お客様』はこういう扱いとなる。ーーそれに、その招待状は偽物だろう?」
シオンは冷静に言った。リオンに更に緊張が走る。
彼女は男性の持つ手紙は偽物の招待状であることを聞いて、更に驚いた。
「ほう?なんで分かったんだ?」男性はニヤリと笑う。
「言うわけが無いだろう。次の対策をされては困るからな。」シオンはそっと目を伏せながら言った。
「そうかそうか。それは残念だな。ーーだが、爪が甘いぜ?」
男性がそう言うと同時に、薔薇の生垣から人が飛び出して来た。男だ。そして、サカキを捕まえた。サカキは後ろに回り込まれ、首に片腕をまわされている。サカキの片手は後ろ手で反対の手に掴まれているので、あの状態で身動きは取れない。
サカキの感情の読み取れない瞳が、正面から3人を見つめる。
「っ?!サカキ!」「……。」
リオンは叫んだ。焦りを滲ませた表情で。シオンは少し警戒しているようであった。
「おいおい。こんな可愛い子ちゃんだからって油断してんじゃねぇよ。笑いそうになったわ。」
サカキを拘束している男が言う。目つきが悪い男だ。
「うるさいぞ。だいたい、誰が『お客様』って言ったら攻撃されると思うんだよ。」
男性は鬱陶しいというように返す。
「まあ、それはそうだな。…さて。お前ら、動くなよ?動いたら、この子の首がへし折れちまうぜ?」
男は少し腕を締める。サカキの首に圧迫がかかる。
しかし、サカキは変わらない表情でただ3人を見つめている。驚きも、恐怖も、その美しい顔からは全く見え無い。
それが異様であるのに、『お客様』の2人は気づいていない。
ーーー『あぁ、綺麗な瞳。』
彼女は美しく光る空の色から、目が離せなかった。




