宵闇騒動~悪夢~
また、だ。
意識が沈んだ後にみる、夢。
それは、悪夢とも取れる、僕じゃない『僕』の『夢』。
また銃声が、聞こえる。
『僕』は無傷だった。彼女を抱きかかえたまま、素早く移動して距離をとっていた。
彼女は不思議そうだった。
『僕』は何も言わない。
『僕』は彼女を下ろして、背中へ隠す。
彼女は少し不安そうな顔をしていた。
そして、銃を取り出した。僕は、一応銃を持っている。でも、使いたくない、『使えない』。人間だろうと何だろうと、『僕は撃てない』。怖くて、嫌だ、『撃ちたくない』。
どんなに酷い目に合わされても、殺されそうでも、『僕には撃てない』。
だけど、『僕』は銃を向ける。そしてーー『撃つ』。
さっき僕がされた様に、引き金にかけた指は少しの躊躇いもなくただ無慈悲に動く。
放たれた弾丸は、相手の銃を貫いた。
そして相手は逃げる。武器を失ったから、当然だ。相手は防戦一方。『僕』は『撃つ』。
相手を、確実に追い込んでいく。
やめて、やめて、やめて、やめて、やめて、やめて、銃弾は、放たれる、やめて、やめて、やめて、『殺さないで』、やめて、右脚に、左の二の腕に、やめて、『傷つけないで』、僕は、違う、『殺したい』わけじゃない、『傷つけたい』わけじゃない、さっきされたからって、『やり返ししたい』わけじゃないんだ。
やめて、やめて、やめて、やめて、やめて、
僕は、ただ、
『生きたいだけ、なんだ』
。
僕の、最後の弾丸は、相手の右肩を貫いた。
僕の言葉は、『僕』には届かない
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『声』、が聞こえる。『あいつ』の声だ。
でも、聞こえないフリをする。こいつは、『あいつ』を殺そうとした。それだけで十分だ。殺す理由なんて、それでいい。
でも、『殺さない』。『あいつ』が望んでいないのもある。だが、そもそも『殺すことは許されていない』。だから、殺さない『殺せない』。
『俺は』、それを破ったって別にいい。気にしない。どんな罰があろうが何をされようが最悪殺されたってどうだっていい。
駄目だ。『あいつ』は『悪くない』。
だから、最悪で不本意でイラつくが、従う。
相手は、右肩を抑えながらこっちを見ている。というより、睨んでいる。その目には、諦めこそないものの、恐怖が滲み出ている。
恐怖に塗れたそいつの目に映るのは、『金の髪と瞳をしたあいつだった』。
笑うことはしない。そいつに、何かを話すこともしない。そんなことは意味がない。
『俺』は、もう弾の入ってない銃を向ける。
弾が入ってない銃はもう意味がない。
でも弾が入ってようが無かろうが、『俺』が向けているものはたった一つ、
冷静で冷酷な『殺意』だけだ。