宵闇騒動〜双子と血と『彼』〜
鮮血が散る。アスカの腹から、口から、溢れ出る。
腹から『生えている』のは、後ろにいる者の『手』。
それが、引き抜かれた。
アスカは後ろに倒れ始める。ヒナタは驚きに目を見開きながら、右手を伸ばした。
アスカの左手に向かって。
しかし、その手は空を掴んだ。
アスカはついに倒れる。血が、綺麗に配置されている煉瓦の道を、地面を染め上げ始めた。
ヒナタは目を見開いたまま、何も言えない。
彼女は倒れたアスカの名前を呼ぶ。直前に、シオンが名前を叫んでいたので、アスカに何かあったのかと思ったのだろう。
リオンの身体で、この光景が見えないように隠されているので、何があったかは分からない彼女。
しかし、だんだんと血の匂いが香り始める。
きっと彼女の方にも届くだろう。
そこで彼女は知るはずだ。何があったかを。
そして、ゆっくりと、リオンは彼女から身体を離して『お客様』の方を見る。
そこには、黒い獣のような人型が居た。
「あっハハハハはっ!ざまぁねぇなぁオイッ!!あのガキ、腹に穴あいてやがんぞ!!はははははっ!」
まるで、『お客様』を守るかのように前に立つ『獣』。
男は嘲笑を叫ぶ。男性はやれやれと肩をすくめる。
「オラ、次だ次っ!白い奴以外はぶっ殺せ!!」
男は『獣』に命令を下す。
『獣』は、ヒナタに向かって一気に距離を詰める。
ヒナタの心臓をその鋭い手で穿とうとした。
しかし、その前に、ヒナタを守る者がいた。
リオンは両手を広げて間に立ち、真っ直ぐに『獣』
を見つめていた。優しい緑の瞳が淡く光っている。
金色の髪が揺らめく。
『獣』とリオンの視線が交わる。
『獣』は、あと一歩というところで、動きを止めた。
「大丈夫。もう大丈夫だから」
リオンの優しい声。その顔は今は彼女からは見えない。
嘆きと憂いが混ざった表情を見たのは、彼の目の前に居る『獣』のみだった。




