宵闇騒動〜『お客様』と双子と、それから…。〜
『お客様』達は短剣を構える。双子は同時に前に出た。
ヒナタは刀を持っている。アスカは何も持っていない。であるのに、どうしてあんなに余裕があるのだろうか?
笑う。笑う笑う笑う笑う笑う。
アスカは笑う。
人懐っこい笑顔である。まるで、好きなものにひたむきな少年のような笑顔で。
アスカは笑う。
少しして、双子は止まる。
誰も動かない。『お客様』も、ヒナタも、アスカも。
緊張。
張り詰めた空気。
そしてーー今。変わった。
『お客様』が動いた。
2人同時に、双子それぞれに目掛けて走り出した。短剣で突く。しかし双子は避ける。左右に別れた。
繰り出す。繰り出す。避ける。避ける。
双子は避け続ける。
当たらない。
気が付くと、双子と『お客様』の位置が変わっていた。双子が背中合わせになっていた。
そして、再度の緊張が走る。
ヒナタは刀を構える。アスカは笑う。
アスカの方に居る『お客様』の男が、鋭い一突きを繰り出す。間合いも速度も完璧だった。けれど。
そこにアスカは居なかった。
「ほらほら、余所見厳禁じゃん?」
くすっ。笑う声。どこから?どこに?
男は声がする方を見た。
下。
男の下に、背中を地面に付け、両手は顔の横に。そして、両足は抱え込んだ状態から勢いよく上へ伸ばして男の首を挟む。
反対では、ヒナタが男性の首に鞘がついたままの刀の切っ先を、喉元に当てて牽制していた。
両者の間合いを、ヒナタは一瞬で詰めてしまった。
停止。
それも長くは続かない。
不意に切っ先が男性の喉元から離れた。
と、同時にヒナタは地面に伏せた。
なぜ?
答えはすぐ分かった。
「そーぉれっ!」
アスカがそのまま男を男性の方へ投げ飛ばしたからだ。男は男性に勢いよくぶつかった。
ヒナタは伏せていたので怪我は無い。
そのまま皆が居る方に戻っていく。
アスカも体勢を立て直しながら戻った。
「危ないんですけど。」ヒナタが言う。
「ごめんごめん。でも避けられたからいいじゃん?」呑気にアスカが言う。
「本当に呑気だよね。だいたい、この間だって……」
「わかったわかった。もー、そんな怒んないで?」
不満を言うヒナタを、アスカは笑顔で諌める。
仲は良いのだろう。顔は同一であるのに、纏う雰囲気は全く別物であった。
双子がじゃれ合うように話している中、『お客様』は体勢を立て直し始めていた。
「クッソが……。調子に乗ってんじゃねぇ……!」
その言葉は、兄弟達の方へは届かない。
そして
「今だ!やれっっ!!」
男が『何か』に怒声とも言える声で命令した。
同時に
「アスカっ!『跳べ』っ!」
左目を片手で覆いながら、シオンが叫ぶ。
手の隙間から見えた金の瞳からは、まるで万華鏡のような、幻想的な模様が浮かんでいた。
アスカは目を見開きながら、『動こう』とした。
しかし、遅かった。
アスカの腹を、背後から『何か』が穿いた。鮮血。
「ーーー 【 】ちゃんっ!!」
リオンはその光景を彼女に見せない様、自分の身体で彼女の顔を覆うように抱きしめた。
なぜ、リオンは彼女の名前を知っているのか。
双子の定位置は決まっています。
アスカの右側にはヒナタ。ヒナタの左側にアスカが来る。
そして、その間に入れる人は……




