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商隊ム!―不本意な転移JKの命懸け魔石紀行―  作者:
ヴィヴァーロの試練
6/13

懇願(3)

「お前ら、自己紹介しな」

「……はい。俺はカミック・スターリア。シュパーブ商隊で働いている。良いか? ユメ・サクラ。もし妙なことしたら、どうなるか分かってるな?」

「俺はカロック・スターリア。カミックの弟。姐さんが言うなら信用してやる」

「ほら、スラヴィアも自己紹介するんだ」

「す、スーはスラヴィア。人間じゃ、ない。せーれー、なの」

「精霊……?」


 夢はスラヴィアを注視する。透き通るような白い肌に、真っ青な瞳。しかし足は地に着いており、異世界の人間にしか見えない。呆然と見つめる夢が気に食わなかったのか、スラヴィアは頬を大きく膨らませる。


「スラヴィア、ユメはまだ信じられていないみたいだよ?」

「……だったら」


 スラヴィアが前に出る。怯えた表情は消え、川面を睨みつける。指先から冷気が渦巻くと、それを間髪入れずに飛ばした。轟音とともに一瞬にして水面が凍りつき、穏やかな水流は完全に停止した。


「……凍った」

「どうだ! てんいしゃ!」


 スラヴィアは胸を張る。夢の周囲には霜が降っており、急に凍った水面は寒暖差でひび割れる。川で泳いでいた魚は内臓まで凍っており、泳いだ形のまま『保存』されていた。一瞬で環境さえ一変させてしまう異質な力に、夢は心身ともに芯から冷えきった。


「よくやった、スラヴィア。さて、最後は私だな。私はシュパーブ・コルト。このシュパーブ商隊を率いている。まぁ、大層なことはやっていないがな」


 シュパーブが笑顔で夢を見る。夢の表情は依然として硬く、首を縦に振ることしかできなかった。


「さて、呼び方はユメで良いかな? さっき、『何でもする』って言ったね?」

「はい」

「早速だが、これから任務だ。カミックとカロックには既に伝えているが、馬車の荷物を守って欲しい。今から言うことは一度しか言わないから、心して聞くように」


 生き延びるため、食い気味に耳を傾ける。


「今運んでいるのは、簡単に言うと薬草だ。これをここから馬車で数日かかる診療所に卸す。その間、夜盗や獣から守るんだ。まぁそれはカミック達に任せるんだが、ユメは目的地に到着した後、問屋へ運んで欲しいんだ。問屋の主はヴァーソ・ヴィクトリス。私からの遣いだと言えば、門番は通してくれる筈だ」


 夢はことの一切を飲み込んだ。しかし、双子は一斉に不安そうな顔をしている。まだ私を信用していないのか……。夢の表情が曇る。


「やることはそれだけだ。やれるか?」

「……やります。成功できるよう、最善を尽くします」

「良い返事だ。スラヴィア。ユメと一緒に馬車に乗ってくれ」


 スラヴィアは無言で頷くと、夢を馬車へと案内した。脚を引きずりながら遠ざかって夢を見ていた双子だったが、彼女の姿が見えなくなると、ほぼ同時にシュパーブへと視線を移した。


「姐さん、大丈夫ですか? ヴァーソさんに会わせても」

「私は、あいつに試練を与えた。街での転移者の評価を、知って貰おうじゃないか」




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