決意(3)
「私をどうするつもりなんですか」
「フロー様に近付いて、監視して欲しいんだ。その為には、直接囚人になるしかない」
「私も看守じゃダメなんですか?」
「何を言ってるんだ。女性が看守になれるわけがないだろう」
「な……っ!」
夢は怒りで声を荒げたかったが、寸でのところで踏み止まる。そうだ、ここは異世界だ。日本の基準で考えてはいけない。彼女は歯を食いしばった後、大きくため息を吐いた。
「なぁ、モンテロ。私ではダメなのか? 最初は私を囚人にしようとしていたのだろう?」
「そう思いました。だけど、あなたはここじゃ有名過ぎる。他の囚人に違和感が伝わってしまいます」
「私も有名になったものだな。今に限っては、全く嬉しくないけどね」
小さく吐き捨てるように、夢を見つめる。恐怖心で震えた手で、ボロ布を受け取ると、再びモンテロに向き合う。
「分かりました、やります。その代わり、一つだけ良いですか?」
「なんだい?」
「あの二人を、常に私の近くに置いてください。連行する時も、刑務作業をする時も。そう取り計らって下さい。新人だから、私みたいな御しやすいチビだったらいけるだろうとか、いくらでもでっち上げて下さい」
「分かった。できる限りそうしよう。今はパレードで少しでも人手が必要だ。俺がなんとかする」
「ありがとうございます。じゃあ、着替えてきます」
夢は二階に上がると、モンテロがシュパーブに深々と頭を下げた。
「申し訳ない、シュパーブさん。あなたの部下を危険に晒してしまって」
「お前はたまに考えることが分からない。フローを救出したら、今度は私たちの好き放題やらせて貰うからな」
「ユメ。そろそろ着替えてきた方が良いんじゃないのか?」
「はい。少々お待ちを」
ボロ布を抱えて、軋む階段を上る夢。カミックは腕を組みながら、彼女の後ろ姿を目で追っていた。
「兄貴、なんかあったのか?」
「あいつ、覚悟決まってたなって」
「そうかもな。ヴァーソさんとこで働いて、何か変わったのかも」
「それとさ……」
「なんだよ」
「俺のこと、カッコいいって……」
カミックの表情が緩みかける。それを見た弟は、呆れながらカウンターに突っ伏した。
「おい、もう少しで仕事なんだぞ。浮ついてんじゃねえよ」
「だけどさ、俺と同じくらいの女の子だぜ? これで気にならないとか男じゃねえって」
「そうか、お前たちもそんな歳か……」
「姐さんもなんてこと言うんですか。そりゃ確かに、お世辞でも嬉しかったけどさ……」
顔を伏せたまま、あの時の夢の顔を思い出す。顔を僅かに赤らめ、視線をそれとなく逸らすあの瞬間。生まれて初めてあんな顔をされた双子は、心の浮遊感を抑えられなかった。そんな二人を前にした大人たちの視線は、慈愛に満ち溢れていた。




