密談(1)
夕刻、馬車の中では、生野菜を貪る湿った音だけが響いていた。
売り物だったはずの葉野菜を、味気なく食べる双子。涙目で果物を凍らせ、シャーベット状にするスラヴィア。苛立ちを隠せないのか、馬車の壁には霜が貼り付いていた。
「……食べ終わったら話がある」
シュパーブの声が、重く軋む。一行は一瞬だけ彼女に視線を向けたが、直ぐに食事を再開した。
一方、夢だけは何も口にしていなかった。空腹を通り越し、絶望と疲労で、視界の端が火花を散らしたように明滅している。そんな彼女を、スラヴィアが不貞腐れながら、それでいて気にかけるように横目で見ていた。業を煮やすと、いつまでも口をつけようとしない夢に対し、乱暴に果実を押し付ける。
「……くえ」
「え……?」
「くえ!」
「んむぐぅ……!?」
冷気を纏ったままの果実が、強引に口に突っ込まれる。口の中が霜焼けになり、意識が飛びそうな刺激が襲ったが、どうにか咀嚼した。グッと飲み下すと、ようやく果実の優しい甘みを感じられた。
「……美味しい。甘い」
「もっとくえ。スー、おなかいっぱい」
スラヴィアが顔を背け、先ほどまで食べようとしていた果物を、夢に押し付ける。彼女なりの優しさに心が揺れた夢だったが、小さく腹の虫が鳴ったのも、聞き逃さなかった。すかさず肩を掴んで、自身の方を向かせる。
「まだなにかあるのか?」
「スラヴィアさん、嘘はダメだよ」
「なにを……、んみゅ!?」
お返しとばかりに、果物をスラヴィアの口へ突っ込んだ。氷菓子を食べるような咀嚼音が小気味良く聞こえた後、飲み下す。スラヴィアは冷たさと気恥ずかしさ、そして戸惑いに頬を真っ赤にし、荒い息をあげて夢を見つめた。
「ユメ、やったな?」
「お互い様。一緒に食べよう?」
「……うん」
陽が落ちた馬車の中に、ほんの少しだけ温かみが生まれた。そんな二人のやり取りを、シュパーブは何も言わずに背中を向けたまま、腕を組んで聞き届けていた。




