転移(2)
「ひぇっ!? し、シュパーブ……?」
「スラヴィア、起こして悪かった。道端で拾い物をしてね」
食料を積んだスペースでうたた寝をしていた氷の精霊――スラヴィアは、シュパーブに困惑の眼差しを向けた。透き通るような白い長髪を震わせ、隣に寝ている夢の顔を恐る恐る覗き込む。
「くろかみ……。もしかして、てんい、しゃ……?」
「そうだ。だけどなスラヴィア。この子、死にそうなんだ」
「え、ええぇっ!? 死んじゃうの……?」
「体力が無くなってな。だから少しだけ、お前の力でこの子を落ち着かせておくれ。ここで死なれたら、寝覚めが悪くなる」
「あつい……。でも、助けて良いの?」
「大丈夫。私が責任を取る」
スラヴィアはシュパーブに促されるまま、夢の額に手を当てる。幼子ほどの背丈だが、彼女は自身の冷気を操り、夢の体温を調節していく。掌に熱が伝わる度、手を引きそうになる。
「くぅぅ……」
「野菜は凍らない程度に冷やせば良い。肉は凍らせる位が丁度いい。だけど、私たち人間は違う。ただ熱を冷ますで良いんだ。大丈夫。お前ならできる」
シュパーブの言葉で、スラヴィアは再び夢を直視する。荒い息が、徐々に落ち着いていくのを感じる。
「大丈夫? 寒く、ない? スー、死なせないからね」
懸命に命を繋ごうとするスラヴィアの指は、夢の熱が伝播したかのように真っ赤になっていた。呼吸が落ち着くと、再びシュパーブを呼ぶ。
「これで、いい?」
「……良いだろう。後は毛布を掛けておいてくれ。手は大丈夫か?」
「あつい。でも、ねたらなおるから」
「そうか。ありがとう」
シュパーブが満足気に荷台から降りる。双子が肉を焼いており、シュパーブに切り分けている。スラヴィアはうわごとを呟く夢を見ながら、少しだけ頬を膨らませた。
「……わるいやつだったら、スーが凍らせるんだから」




