王都(2)
「ようやく入った。さ、市場調査だ」
「うわ、凄い。ゴミが一つも落ちていないですね」
夢は幌から顔を出し、ビュートの街並みを眺めていた。えんじ色の石畳は綺麗に清掃されており、周囲には小金持ちな民が、カフェで軽食を楽しむ姿が見える。
「私がヴァーソさんのところで掃除した時は、やってもやっても終わらなかったのに。王都の人たちってこんなに綺麗好きなんですね」
「……ああ、そうかもな」
「カミック、お前も気付いたか」
二人が眉間に皺を寄せながら、ビュートの街を注意深く見つめている。
「あの、私ここ初めて来たんですけど、なんでこんなにしかめっ面してるんですか?」
「ああ、ごめん。俺たち、一年に一回は必ずここに寄るんだよ。良い服を仕入れられるから。去年来た時は、まあまあ汚かったんだぜ? それこそ、あのカフェの近くとか、鳥の糞まみれで酷いもんだった」
「そうだったんですね。さっきの馬車といい、王都でそういう啓発でもやってるんでしょうか……」
夢はまだ事態を飲み込めていなかった。そして、馬車が止まる。『停泊所』と書かれた敷地で、一行はようやく一息つくことができた。スラヴィアが我先にと外に出る。
「つかれたー!」
「まずは皆、お疲れ様。さて、この野菜をどう売るかだが……」
「あっちに露店がありますよ。空いてるところで商売しませんか?」
「市場調査が先だ、カロック。私は馬とスラヴィアを休ませる。ユメ、頼んだ」
「はい。この紙に、物の価格を書けば良いんですよね?」
「そうだ、行ってこい」
初めてまともな任務を与えられた夢の足は、長旅にもかかわらず軽かった。一目散に露店街へと走る彼女の背を、シュパーブと双子が不安混じりの視線で追っていた。
「姐さん、転移者って、ここでも嫌われているんですか?」
「そういう話は聞かないな。それよりも、あいつはまだ、向こうの世界の感覚でいるらしい」
熱心に書き取りを行う夢に、シュパーブは無事を願わずにはいられなかった。




