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ドクガとの決戦


ドクガが正式に申し込んできた。


通信でだった。丁寧な文面だった。


「宇宙律に則り、正式な競技を申し込みます。場所と時刻を指定しました。拒否権はありません。では、よろしくお願いします」


ルミが通信文を読んで言った。「拒否権はない、か。こっちも分かってて言ってる」


「受ける」と銀河丸。


「当然受けます。競技の内容を見てください」


画面に表示されたのは複合競技の説明だった。


「知恵・速さ・体力の三種同時競技。一種目ずつではなく、三つを並行して行う。どれか一つが欠けたら負け、だと?」


「全部同時に」とルミが繰り返した。「私が分析している間にキラが速さの競技を走り、銀河丸が体力の競技を続ける——それが全部並行。三つ全部でドクガに勝たないといけない」


「ドクガは一人でやるのか」


「ドクガと、助手が二人。三人でチームを組んでくる」


「三対三か」


「三対三。でもドクガのチームは——ドクガが三種全てを高水準でできる。助手はサポートに徹する」


「それで?」


「こっちは分担する」


銀河丸がルミとキラを見た。「知恵はルミ。速さはキラ。体力は俺」


「私が知恵で勝てるかどうかは——」とルミが言いかけた。


「勝てる」


断言した。ルミが少し固まった。


「……どうしてそう言えるんですか」


「お前の分析は俺には絶対できない。ドクガも頭がいいかもしれないが、お前のことを下に見たらそこが弱点になる」


ルミが一瞬、口をつぐんだ。


キラが腕を組んで言った。「速さは任せろ。誰よりも速く動ける自信はある」


「体力は俺だ。諦めなければいい」


三人が頷いた。


---


競技の場は開けた惑星の平原だった。三つのコースが並行して設置されている。


知恵のコース——巨大なパズルと情報処理。速さのコース——障害物だらけの長い直線。体力のコース——重い石を運んで、また戻して、また運ぶ。終わりが見えない単純作業。


ドクガが現れた。コートが風に揺れている。助手が二人、後ろに控えている。


「本日はよく来ました」


礼儀正しい。笑顔がある。


「どの種目にも手を抜くつもりはありません」とドクガが言った。「あなた方も同様でしょう」


「同様だ」と銀河丸。


「では始めましょう」


---


三種目が同時に始まった。


知恵の競技——ルミが大量の情報を処理した。ドクガが素早く答えを出す。でもルミは情報の中に仕掛けられた罠を見抜いた。「この問いは前提が間違っている」と言って前提から組み直した。ドクガが一瞬止まった。


「……なるほど。前提まで疑うか」


「当然です」


ルミの分析は速かった。ドクガが出す答えが正しいかどうかを確認しながら、自分の答えを組み立てる。情報量が多ければ多いほど、ルミは速くなる。


速さの競技——キラが走った。障害物を越える。跳ぶ。潜る。向こうのコースでドクガの助手が走っている。速い。でもキラの方が——


キラが最初の障害を越えた時、体勢が崩れた。わずかに。砂に足を取られた。でも崩れたまま次の障害に向かった。崩れた体勢のまま、さらに速く動いた。転びそうな勢いを、加速に変えた。


助手が追いつけなかった。


体力の競技——石を運ぶ。戻る。また運ぶ。


重い。


すごく重い。


足が痛い。腕が痛い。息が上がる。


でも諦めない。


ドクガが横を走っている——いや、歩いている。正確で計算された動き。エネルギー効率が完璧だ。疲れない動き方をしている。


でも銀河丸は諦めない。


疲れながら、それでも諦めない。疲れた時に諦めないのが、銀河丸の底だった。江戸の道場で一番ひどかった時、師範が言った。「お前は諦めるのが一番遅い。それだけが取り柄だ」——誉め言葉だと思うことにした。


石を運ぶ。戻る。また運ぶ。


---


競技が終わった。


三種目の結果が発表された。


知恵——ルミの勝ち。速さ——キラの勝ち。体力——引き分け。


宇宙律のルールで、総合は三人チームの勝ちだった。


ドクガが負けを認めた。また深く頭を下げた。


「——面白い勝ち方をする」


穏やかに言った。本当に楽しそうに見えた。


「分担して戦う。それは知っていた。でも——分担した先の突出した強さまでは予測できなかった」


「ルミの分析は——」と銀河丸が言いかけた。


「圧倒的でした」とドクガが続けた。「私が前提と思っていたものを疑われた。想定外だった。キラさんの速さも——体勢が崩れてから速くなるとは思わなかった。銀河丸さんの体力は——諦めないということが、こんなに力になるとは」


ドクガが踵を返した。


「ジゴク様に報告します。宇宙侍のチームは、予想以上です」


「次も来るか」と銀河丸。


「もちろん」


コートが風に揺れる。


「楽しかったと言うと不謹慎ですが——楽しかった。また参ります」


歩いていく。礼儀正しく。怒らず、悔しがらず、でも何かを確かめた顔で。


三人で背中を見送った。


---


「……疲れた」と銀河丸が地面に座った。


「私も」とルミが隣に座った。


「俺も」とキラが壁に寄りかかった。


三人で黙っていた。


しばらくして銀河丸が言った。「次はもっと難しい勝負を仕掛けてくる」


「分かってます」とルミ。


「でも——今は疲れた」


「今は疲れていい」とキラ。


また沈黙。


「……腹が減った」と銀河丸。


「また言ってる」とルミ。


「腹が減っては戦はできぬ。まあ、今日の戦いはもう終わったが」


「私がキラさんの作ってくれたやつ、少し残してあります」


「あの穀物を握ったやつか?」とキラ。


「それ」


「……持ってきてくれ」


三人で食った。競技の後の、疲れた体で。味がいつもより沁みた。


---


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