分断の中で
三人が別々の星に降り立った時の話。
これは、それぞれの記録だ。
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〜銀河丸の記録〜
偽の星に降りた。ヤミ兵に囲まれた。ゲームで勝った。
それだけではなかった。
囲まれた瞬間、一人だと思った。本当に。ルミもキラも遠くにいる。通信は細い。届くか届かないか。
ヤミ兵がじりじりと近づいてくる。
その時、横から声がかかった。
「宇宙侍」
振り返ると、岩陰に人影があった。小さな子供——子供に見えた。この星の住人らしき人。
「あなたの噂を聞いた」
声が小さかった。怖がっているのか、それとも緊張しているのか。
「助けさせてほしい。こっちに来て」
「お前が?」
「私だけじゃない。みんないる」
岩の向こうに人がいた。大人も子供も、この星の住人が十人ほど。ヤミ兵が来た時から隠れていたのか。
「罠と分かっていても信号を出したのは俺たちだ」と年配の人が言った。「ヤミ兵が来た時、本当に助けを求める信号を出した。あなたが来てくれると思って」
「それが——ドクガの信号に混じったんか」
「おそらく」
仲間がいなくても、繋がりがある。
一人で来たのに、一人ではなかった。
岩陰から住人たちが出てきて、ヤミ兵の囲みを乱した。銀河丸が駆けた。間を読んだ。抜けた。勝った。
一人で立った。でも一人ではなかった。
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〜ルミの記録〜
ルミが向かった星は、信号がなかった。
厳密には——信号が途中で切れた。降りた時にはもう何もない。住民も少ない。ヤミ兵もいない。
「偽信号の発信源だ」とルミはすぐに気づいた。
誰かがここから信号を出した。そしていなくなった。
一人で考えた。
ルミは銀河丸の傍にいることが多かった。銀河丸が体で動く横で、ルミが頭で補佐する。それがパターンだった。
でも今、銀河丸はいない。
一人で考えた。
発信源の機材が残っていた。ヤミ軍の規格の機材。型番がある。型番から製造星が分かる。製造星から流通ルートが——
一時間で解析した。
偽信号の出所が分かった。
「私は情報で戦う」とルミは誰もいない部屋で言った。「それだけで十分だ」
機材を無力化した。同じ仕組みで偽信号が出せないように細工した。
通信機でキラに送った。「こっちは終わった。キラ、そっちは?」
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〜キラの記録〜
キラが向かった星の信号は、確かに変だった。
降り立つ前から分かった。信号のパターンが不自然すぎる。本当に助けを求めている人間は、もっと必死だ。もっと不均一だ。これは機械的に出力された信号だ。
「罠だ」とキラは一人で決めた。
ならば——逆に使う。
ドクガの信号発信源にはドクガの補給船が繋がっているはずだ。作戦の拠点がある。そこを叩く。
単独で動いた。
キラは一人でいることに慣れている。ずっと一人だった。仲間を失ってから、ずっと一人で動いてきた。一人で考えて、一人で決めて、一人で動く。
でも——今は違う感覚があった。
銀河丸とルミがどこかにいる。同じタイミングで動いている。通信は細いが、繋がっている。
補給船を見つけた。
小型の輸送船。無人。でも積み荷がある。信号機材、補給物資、それから——地図。
地図を奪った。
ドクガが次に狙っている星域の地図だ。これは——後で役に立つ。
「キラ、そっちは?」とルミから通信が来た。
「終わった。補給船を奪った。地図も手に入れた」
「さすがです」
「当然だ」
補給船を操縦して合流地点へ向かいながら、キラは窓の外を見た。
星が多い。宇宙は広い。
こんなに広い場所で、三人でいる。
妙な、気持ちだった。
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三人が再集結した。
誰も怪我していない。
それだけでいい、と思った。
三人が別々の話を持ち寄った。銀河丸が住民たちに助けられたこと。ルミが偽信号を無力化したこと。キラが補給船と地図を奪ったこと。
「三人とも、別々に勝ちを持って帰ってきた」とルミが言った。
「まあ」と銀河丸。
「私は——一人でも戦えると思ってたけど。証明できてよかった」
「俺も一人で立てた。でも一人じゃなかった。住民に助けてもらった」
キラが荷物から何かを取り出した。
「こっちに来てたら全部じゃないが——各自がおにぎりっぽいものを探してみろ、と思ってた」
三人が持ち寄った。銀河丸が住民からもらった丸い実。ルミがその星に売っていた粉を丸めたもの。キラが補給船の中にあった干し肉を丸く巻いたもの。
全部微妙だった。
「全部微妙です」とルミが言った。
「分かってた」と銀河丸。
「なんで持ち寄ったんですか」とルミがキラを見た。
キラが少し間を置いた。
「……笑えると思った」
笑いになった。宇宙の真ん中で、三人が笑った。
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