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『凡人修仙伝』: 不死身を目指してただ逃げてたら、いつのまにか最強になってた  作者: 白吊带
第二卷: 煉気編一初めて世間に·血色禁地
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宝器持ちの女

 

 韓立の口元がピクッと痙攣(けいれん)した。内心で罵(ののし)りたくなったが、ぎゅっと閉じていた両目は仕方なく開いた。


 法力はあと少しで完全に満ちる所だったが、誰かが近づいてきた以上、悠長(ゆうちょう)に座禅(ざぜん)を続けるわけにはいかない。特に、来たる者の実力がわからない状況では!


「どちらの師兄(しけい)がいらっしゃいますか? どうか妹を助けてください!」


 黄衫(おうさん)の女が近くの林からよろめきながら、韓立がいる木の下へ駆け込んできた。驚き慌てた様子で上を見上げ、大声で救いを求める。どうやら上に必ず救いの手があると確信しているようだ。彼女の後方、少し離れた場所では、白い人影がのんびりと近づいてくる。女の狼狽(うろたえ)とは対照的に、非常に余裕たっぷりだ!


 これを見て、韓立は白目をむいた。この女同門の災厄(さいやく)を招く行為に強い不快感を抱いた。彼女が自分の隠れ場所を見つけたこと自体は、さほど驚かなかった。


 黄楓谷(おうふうこく)の弟子たちは全員、出発前に掌門(しょうもん)の**鍾霊道(しょうれいどう)**から**牽引の術(けんいんのじゅつ)**を施されていた。一定範囲内で同門の位置を互いに感知できるようにするためだ。もちろんこれは時間制限があり、十日間のみ有効。門内の弟子が互いに助け合い、勝機を大きく高めるためだ。


 他の各派の弟子たちも、同様の法術を施されていると伝えられている。


 やむを得ず、韓立はこの女を一瞥(いちべつ)した。


 確かに面識はあった。**陳師妹(ちんしめい)**と一緒にいた女同門だ。プロポーションがかなり刺激的な以外は、顔立ちは実に平凡極まりない。


 韓立は冷たい目で女の苦しい懇願(こんがん)の表情を見たが、軽率にすぐに木から飛び降りたりはしなかった。代わりに木の葉の間の小さな隙間から、後に続く白い人影を注意深く観察した。


 助けるにせよ助けないにせよ、まずは相手の法力の深さを確かめたかった。見知らぬ女のために、自分の命を危険に晒す気はさらさらなかった。


 もし白い影の法力が平凡なら、韓立は遠慮なく手を下し「英雄救美(えいゆうしゅうび)」を演じるつもりだった。だが法力が深く驚異的なら、木の下の同門と連携して敵を退けるか、それとも即座に逃げ出すかを考えねばならない!


 しかし万一に備え、彼は手を収納袋にかけ、法器(ほうき)「**金蚨子母刃(きんぷしぼじん)**」と防御符籙(ぼうぎょふろく)を取り出した。そして無名の糸も巧みに指に巻きつけた。


「あらあら、走り方が本当にみっともないわね! 黄楓谷の女弟子はみんなそんなに役立たずなの? こんなに長く走ってきて、結局は臭い男に助けを求めるなんて。木の上のやつ、あんたの恋人でもあるの?」


 白い影が徐々に近づき、その正体を現した。それは白い衣を翻(ひるがえ)す妙齢(みょうれい)の女だった。顔立ちはいくぶん色気があったが、二本の眉はわずかに吊り上がり、殺気(さっき)に満ちている。


 この言葉は木の下の黄衫の女に向けられたものだったが、殺意を漂わせる両目は絶えず木の上へと流れていた。どうやら口にしたほど自惚(うぬぼ)れておらず、隠れている韓立に対して幾分かの警戒を抱いているようだ!


「十二層功法(こうほう)」


 相手の実力を容易に見抜き、韓立は内心ほっとした。


 しかし彼は疑問を抱いていた。木の下のこの女同門も十二層功法のようだが、どうしてこれほど惨めに追われる羽目に? もしかすると相手に何か特別な手段や、強力な法器があるのか?


 韓立が首を傾げていると、白衣の女は冷ややかに鼻を鳴らした。突然、両袖(そで)を一振りし、二本の白い光が袖の中から飛び出し、黄衫の女へと一直線に襲いかかった。


「師兄、助けてください! 妹の法器は全て壊れてしまって、防げません!」黄衫の女は顔色を失い、慌てて叫んだ。


 その言葉が終わるか終わらないうちに、二道の金光(きんこう)が樹冠(じゅかん)から激しく飛び出し、途中で白い光を迎え撃った。絡み合いながら戦い始める。どうやら韓立が手にした「金蚨子母刃」を操ったようだ。二道の金光は、そのうちの二振りの子刃(こば)に過ぎない。


 黄衫の女は喜びの表情を浮かべ、ようやく落ち着きを取り戻した。


 韓立が手を出した理由は二つある。一つは白衣の女が特に恐れるに足らず、対処できると判断したから。もう一つは今後の道中で相棒を確保するためだ。敵と対峙(たいじ)する際に孤立するのを避けたかった。何と言っても十二層功法の同門なら、今後の戦いで多少なりとも役立つだろうから!


「ついに手を出す気になったのね! ずっと知らんぷりを決め込むのかと思ったわ!」白衣の女は嘲笑(ちょうしょう)し、全く驚いた様子もない。だが手を挙げると、巨大な火の玉が樹冠めがけて直撃した。


 **「ドカン!」**


 大音響と共に、木の上半分が真っ赤に燃え上がり、瞬く間に灰と化した。だが誰も現れない。白衣の女は一瞬呆然(ぼうぜん)とした。


「なかなか手強い大火球符(だいかきゅうふ)だね。お嬢さん、本当に気前がいいよ!」半分焦げた幹の後ろから、突然韓立の姿が現れた。彼は笑っているようでいないような口調で言った。


「十一層?」


 白衣の女は一瞬呆けたが、すぐに侮蔑(ぶべつ)の色を浮かべた。


 黄衫の女はようやく安堵(あんど)した表情が、再び慌てふためいた。内心ひどく落胆した。門内のどの高手(こうしゅ)の師兄かと思ったら、なんと自分より法力の劣る新米(しんまい)の師弟だったのだ!


「さっきまで黙って傍観(ぼうかん)していれば、本お嬢様の機嫌が良ければ見逃してやれたかもしれないのに。でも自ら手を出した以上、二人一緒に仲良く黄泉路(こうせんろ)を行きなさい!」白衣の女の眉はさらに吊り上がり、陰険(いんかん)な口調で言い放った。元々いくぶん美しかった顔は歪み、凶悪なものへと変貌(へんぼう)した。


 韓立は微笑み、一言も発さず金刃(きんじん)の戦いを操り続けた。体は気ままに彼女へと歩み寄る。


「止まれ! 何をするつもりだ?」


 白衣の女は機敏に叫んだ。手を上げて自身に防御法術の符籙を一枚貼り付け、光の幕を張った。


 この時、韓立は彼女からわずか二十数丈(じょう)の距離だった! これは彼を非常に残念がらせた!


 以前、透明な糸を使って天闕堡(てんけつほう)の弟子を容易く葬り去って以来、韓立はこの戦術に強い関心を抱いていた。さっき木の上で、白衣の女が防御法術を張っていないのを見て、ひらめいた彼は当然あの日の光景を再現しようと考えたのだ。


 しかし残念ながら、相手は実に警戒心が強く、早々に不穏(ふおん)を察知し、この弱点を補ってしまった。韓立は思わず天を仰いで嘆いた。女は確かに男より慎重なのだと!


 小細工(こざいく)が通用しない以上、強攻(ごうこう)あるのみだ。


 失望した韓立は無駄口も叩かなかった。防御法術を張ると、手にした母刃(ぼば)を軽く震わせた。収納袋からさらに六振りの全く同じ金刃が飛び出し、凶暴に相手へ襲いかかった。


 黄衫の女は韓立の法器が非凡(ひぼん)そうなのを見て、死を覚悟した心が再び動いた。すぐに符籙を一枚投げた。それは長い火の蛇へと変わり、激しく飛んでいった。


 白衣の女は冷笑を浮かべた。玉のような手を軽く差し出すと、掌(てのひら)サイズの小さな鏡が現れた。


 彼女が鏡を軽くかざすと、一片の青い光が噴き出し、襲いかかる金刃と火の蛇を覆った。それらは空中でくるくると回転するだけで、もはや落下できず、まるで誰かに術を封じ込められたかのようだった。


 韓立は目を見開いた! これは何という法器だ? どうしてこれほどまでに常識外れなのか? 他人の法器や法術を固定できるだなんて、これではどう戦えばいい?


「師弟、心配しないで! 彼女のこの法器は一度に一箇所しか固定できず、しかも固定時間は半刻(はんとき)だけ。時間が来れば効果は消えるわ!」黄衫の女は韓立の驚愕(きょうがく)を見抜き、すぐに慰めの言葉をかけた。


 韓立はそれを聞き、ようやく安心した。しかし女同門の次の言葉は、すぐさま韓立の心臓を再び高鳴らせた。


「でも、この悪女は**掩月宗(えんげつしゅう)**のとある長老(ちょうろう)の子孫で、賜(たま)わった奇怪な法器を数多く持っているの。師弟、十分に気をつけた方がいいわ!」


 韓立は言葉を失った。


「道理で同じ十二層の女弟子であるこの同門の師姉(しけい)が、これほどまでに惨敗するわけだ。相手が**宝器持ちの女(たからもちのおんな)**だったのか! 知っていれば、英雄気取りで飛び出したりはしなかったのに!」韓立はすでに深く後悔し、十中八九また命懸けの戦いをしなければならないと覚悟した!


注釈**


**法力(ほうりき)**: 修仙者が操る神秘的な力。術や法器行使の源。


**牽引の術(けんいんのじゅつ)**: 同門の位置を相互に感知可能にする支援法術。一定期間有効。


**掌門(しょうもん)**: 修仙門派の最高責任者。


**鍾霊道(しょうれいどう)**: 黄楓谷(おうふうこく)の掌門の名。


**金蚨子母刃(きんぷしぼじん)**: 親刃(ぼば)と子刃(しば)で構成される特殊な法器。子刃は複数操れる。


**大火球符(だいかきゅうふ)**: 巨大な火球を発生させる攻撃用符籙(ふろく)。


**功法(こうほう)**: 修仙の修行体系とその段階(例:十一層、十二層)。


**黄泉路(こうせんろ)**: 死後の世界への道。転生を意味する。


**防御符籙(ぼうぎょふろく)**: 防御用の法術を封じた符籙。


**掩月宗(えんげつしゅう)**: 主に女性弟子が中心の修仙門派。


**師兄(しけい)/師弟(してい)**: 同じ門派内での先輩・後輩の呼称。


**半刻(はんとき)**: 約1時間(修仙世界観での時間単位)。


**樹冠(じゅかん)**: 木のてっぺんの枝葉が茂った部分。


**同門(どうもん)**: 同じ門派に所属する者同士。

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