第三話 狭山某所
「すごいぞ!すごいぞ!」
狭山郊外の工業団地の片隅にある島田製作所という看板をつけた小さな工場での出来事だった。
ここの主、島田が騒いでいる。
彼は本業の傍ら趣味でいろいろ発明をしている。小型プラズマ発生装置やドローンの自立飛行ソフトなどを作り出していた。
今は、小型のサイクロトロンを作り、タイムマシンが作れないものかといろいろ実験をしている最中の事であった。
サイクロトロンを稼働中に突然空中に微小な黒い点が現れ、床に落ちた。
その瞬間、白い閃光とともに床が直径30センチメートルほどの半球型にえぐれてしまった。
島田はいったい何が起きたのかわからなかった。爆発でもなかった。白い光とともに床が消えてしまった。
「残渣も何もない。これは化学反応ではないな。念のために。」
そう言って、奥からガイガーカウンターを持ってきたが特に目立った反応は出なかった。
「放射線はないか。いったい何が起こったのか?」
記録していたビデオを確認した。空中にいきなり黒い球形の粒子が現れ、落下して、床についたと思われるときに閃光を出したのが確認できた。
画像から、粒子の大きさ落下速度から密度を割り出して、黒点の物理量を推定する。消失したコンクリート量から、昇華させるだけのエネルギーと算出してみた。
すると、ほぼこれに近い値になることが分かった。
E=mc2
「あれは、反物質なのか?」
もう一度試してみることにし、今度は高速ビデオカメラをセットした。
やはり黒点が現れて、床に穴が開いた。さすがに今度は時間を短くしたので消失した部分は小さい。
ビデオで確認すると、黒点が現れる直前に空間にゆがみが出ているような挙動が見られた。
「もしかして別次元とつながった?まさかね。
でも、消失した物体はどこに消えたのか?元の次元の戻った?エネルギー保存法則が成立しなくなるから?わかんないや。」
しかし、目が笑っている。
「今まで誰も成し遂げなかった反物質を手に入れたぞ。」
これが冒頭の雄叫びの経緯だった。
「それではこの反物質を貯める容器を考えないと。」
反物質はすべての物質と反応するため通常の容器に入れることはできないため、理想としては真空中に浮かせるしかない。
そこで、島田はチタン合金の容器とプラズマ発生装置を組み合わせて、プラズマ内に反物質を封じ込めるように考えた。
早速部品の設計図を書いて、いつもの加工屋にデータ送信した。ほどなく納期は3日後と回答が来た。
3日後に早速容器を組み立てて、反物質を入れてみた。容器は消失しない。プラズマの中で維持されているようだ。島田は調子に乗って、反物質をどんどん入れていった。プラズマ発生装置の負荷が増大してきた。反物質を入れすぎてしまった可能性がある。このままでは工場ごと消失してしまう。
島田は容器を移動して、反物質を取りだそうとしたが、それは無理な話だった。思案の末、消費すればと思い、小さな炭素粒子を容器内に入れた。すると中で対消滅反応がおこり、容器からプラズマが勢いよく噴出した。
「やったね。これを使えば対消滅機関が作れそうだ。とんでもない動力になるぞ。」
島田はニコニコしながら、容器を見つめていた。




