第一話 機密会議
西暦2034年5月某日、市ヶ谷にある国防軍総合指令本部の総合事務棟地下の会議室に国防大臣が総合指令長官と各軍の幕僚長、防衛装備開発局長を呼んだ。
天海国防大臣が切り出した。
「いうまでもなく、キーナ国の最近の挑発は目に余るものがある。そこで我々としても手をこまねいているわけにもいかないので、南西海域の防衛拠点として日入島にレーダー基地の建設を成し遂げたい。
ただ、その後の日入島の防衛を考えると、現在の陸海空軍の装備では心もとない。
そこで、対島嶼作戦に耐えうる人材の育成と装備の開発を行いたい。これは総理のお考えでもある。」
陸防幕僚長の岩波大将が口を開いた。
「我々に話すということは、すでに具体的な実施項目が練られているのですか?」
「実はすでに、ここにいる防衛指令本部作戦局と防衛装備開発局のほうでドラフトは作成してもらっている。
しかし、詳細はまだこれからであり、そこを詰めるにあたって、各軍からメンバーを派遣してもらいたい。」
傍らにいた男が口を開いた。
「防衛作戦指令本部の中里です。私から現時点で決まっている概要を説明いたします。お手元のタブレットの資料を合わせてご覧ください。
まず、日入島に基地を設けることに対し、敵国は阻止を計ることを念頭にしております。したがって、最悪の場合は敵軍が上陸し基地の占拠を目論むと想定しております。これはわが軍としても今まで想定していなかった敵との交戦につながるということになります。」
「実力行使もやむを得ないというのか。」
海防幕僚長の佐々木中将が国防大臣を見ていった。天海国防大臣は黙ったままうなずいた。
「続けます。
わが軍は、国防軍になったとはいえ、専守防衛が憲法で規定されているため、もっぱら防衛用の装備しか配備していなかったです。したがって、国土に上陸してくる敵をせん滅させるための装備は乏しく、現時点では陸防軍の肉弾戦に頼るしかないのが実情です。これでは圧倒的に戦力不足と言わざるを得ないです。」
「私としても部下を犬死させることは同意できない。」
岩波が中里の説明を遮るように言い放った。
「もちろんだとも。そうならないようにこの作戦を立てているんだ。北方領土や竹島の二の舞はしたくない。」
総合指令長官の大脇大佐が岩波の不安をかき消すように答えた。
「先ずは、最後まで説明を聞いてくれ。中里中佐、続けてくれたまえ。」
「はい、続けます。
日入島に対し、援軍の補給と敵部隊のせん滅を想定した装備が必須になります。上陸艇や空挺部隊では的になるだけですから、敵の攻撃を受けずに上陸できる能力が必要になります。また、敵上陸部隊に対する攻撃も、攻撃ヘリでは敵戦闘機に対峙した場合に戦力不足となります。
これらを総合的に分析した結果、陸海空防軍の合従軍による作戦が必要になると判断しました。」
「装備はどうするんだ?開発局が来ているということは新規開発が進んでいるということか?」
空防幕僚長の白井が聞いた。
「もちろんです。それについてはまだ計画段階ですが開発局の霧島少佐から説明してもらいます。」
開発局長長谷川中将が答えた。




