第三話 侵略
モニターに映ったのは紛れもなくキーナ国の国旗だった。
「やはり奴らか。」
その瞬間、けたたましく警報音が鳴り響いた。F-15からだった。
「どうした?何があった?」
「ロックオンされました。」
「レーダーにはミサイルの機影はありません。」
「偵察は中止だ、全速離脱して帰投せよ。」
「了解しました。」
F-15はアフターバーナーを全開にして日入島空域を離脱した。
「総理、大変なことになりました。」
「急いでキーナ国大使を官邸に呼んでください。」
「報道はどうしますか?」
「報道管制します。まだ相手の出方がわかりません。ここにいる者のみの情報共有でお願いします。管制解除は私のほうで適宜判断して伝えます。」
首相は中途半端な情報で国民がパニックになることを恐れて、当面は公表を控えることにした。
「状況確認が必要ですが、どうしたらよいものか。」
「航空機は使えそうもないですね。」
「偵察衛星の画像はどうだ?」
「不鮮明で変化は認められません。」
「ロックオンした以上、地対空ミサイルくらいは持ち込んでいると考えてもよさそうだ。」
「アメリカの偵察衛星画像をもらえませんか。」
「国防大臣、依頼できそうですか?」
「総理から依頼してもらったほうが効果的でしょう。」
「わかりました、交渉します。」
総理はそう言うと、モニターがいったん消えた。
「直接見に行くしかなさそうです。」
「朝霞からレンジャー中隊が石垣島に派遣されています。もともとレーダー基地護衛任務のために配置されていますから、彼らを偵察に向かわせてはどうでしょうか?」
「そうだな、それがいいだろう。翌未明0100決行とすると2000には石垣を出る必要があるが、ひゅうがは石垣にいつ帰投できそうかな?」
「今の予定では、1100になります。」
「石垣島でその間に準備は可能か?」
「はい、やります。」
「よし、では明朝未明0100に日入島に偵察上陸作戦を決行する。」
大脇指令長官が作戦決行を決断した。
「やばい。ちょっと席を外します。」
そう言って霧島は作戦室を飛び出した。
「どこへ行くんだ。」
そう言いながら中里も後を追った。
霧島はプロジェクト室に戻り、電話をしていた。
「私だ、早朝に申し訳ない。くわしくは言えないが緊急事態になった。研究室にあるLSCはすぐに使える状態か?」
「2台は使えますが、まだ試験は完了していないです。」
「それは承知している。」
「水素発電機の試験を中断して、もう1台動かすようにすることはできるか?」
「カプセル側の改造は終わっていますから、1時間もかからないです。」
「わかった。申し訳ないがすぐに登庁して着手してくれ。そしてそれを入間まで運んでほしい。時間はそうだな、1000までだ。できそうか?」
「はい、了解しました。1000までに入間までLSC3台を搬入します。」
「よろしく頼む。」
「次はパワースーツだな。」
「私だ、朝からすまないが、緊急事態だ。旧式のパワースーツで稼働できるのは何台あるか?」
「バッテリーを入れれば動かせるのは2台だけです。」
「そうか、ではそれを1000までに入間に搬入してほしい。可能か?」
「持っていくだけであれば問題ないです。」
「ではお願いする。」
霧島は電話を切った。
「いったい何を企んでいる?」
中里が不審に思い尋ねた。
「葵が行くことになると思う。」
「なにっ・・・」
「あいつは今は石垣島にいる。さっき言った中隊は葵の中隊だ。」
「そんな・・・」
「今私ができることは、不完全ながらこれらの装備を届ける事だけだ。」
「なぜ、黙っていた。」
「言って、どうなる。今それをここで言ってもどうにもならない。あとは入間から石垣までの手配が必要だ。定期便に載せられれば良いが・・・・」
「よし、直談判する。」
中里は霧島を連れて作戦室に戻った。
総理はすでに戻っていた。
「すまない、アメリカ軍の偵察衛星の件はどうなった。」
中里は傍らの士官に聞いた。
「占領された時点で領土問題になるから介入しないってさ。」
不機嫌そうに回答してきた。
「やはりそう出るか。」
中里は空防幕僚長を探した。
隅で、陸防幕僚長と話をしている。
「ちょうどよい。行くぞ。」
「お話し中すみません。先ほどの偵察作戦に持って行ってもらいたいものがあります。何とか入間から石垣まで移送でないでしょうか。」
「何を持っていくんだ。」
「パワースーツとLSCです。どちらも開発中の試作ですが、丸腰で行く以上、現状で支援できる最大の装備です。」
「確かに、火器は持ってはいくが、彼らの判断で撃つことは許されないだろう。」
「那覇から石垣に必要な物資輸送を行う。1600に出発する。そこまでに間に合えばひゅうがに積める。」
「入間に1000までに搬入します。白井幕僚長、そこから那覇まで搬送をお願いできますか?」
「わかった。C-2を飛ばすように指示を出す。」
「ありがとうございます。」




