第三話 先進医療技術研究所
「霧島さん、機密事項ではなかったのですか?」
渡辺が改めて聞いた。
「パワースーツとLSCの開発はプロジェクト前から開発していて予算もついているものだから、通常の装備開発レベルかな。そもそも責任者が私だから問題ないよ。
ここで内容を言っておかないと進まないし、おそらくあの会社なら審査を通るだろう。キーナ国と変な取引さえなければ大丈夫だ。」
「次は財団法人の先進医療技術研究所です。半官の財団ですからおそらく審査は大丈夫かと思います。」
JAXAからさほど離れていないところにその先進医療技術研究所はあった。研究所と言ってもちょっと大きな工場のような簡素な建物であった。
二人は研究所内にある高島の研究室を訪ねた。
「お邪魔します。国防軍の渡辺です。」
奥から、無精ひげを生やした人物が現れた。
「高島です。よくおいでくださった。よく見てください。」
高島は歓迎して二人を迎えた。
研究室の中はメカニカルな手足が何本も置いてある異様な光景だった。
「私のロボット義肢を見てみたいとのことですが、国防軍が何用で必要となさるのか?負傷兵対策とも思えないし・・・」
「そのことですが、実はこのようなパワースーツを開発しておりまして」
と、霧島は言いながらタブレットの写真を高島に見せた。
「土木用のパワースーツの改良版ですね。」
「よくご存じで、ただ動きが遅くて使い物にならないので、動作を早くしたいのですが良いモーターもなくて困っているところに高島さんの開発の話を聞いて飛んできたのです。」
確かに本当に飛んできたなと渡辺は思った。
「そうですか。この手のモーターを軸にした関節はトルクが出るけど速度は出ないですね。私のものを見てください。このようにリニアアクチュエーターを人間の筋肉と同じように配置して伸縮動作で動かします。動かしてみましょうか?」
そう言って高島はボックスのスイッチを押した。目の前につるしてあった脚が高速で伸縮を始めた。
「計算上は100メートルを8秒台で走れます。」
高島は得意げに言った。
「すごいですね。この速度が欲しかった。それにしてもすごく静かだ。これだけのメカニズムがきれいに動いている。」
霧島は感心してみていた。
「可動部はすべてテフロン加工のボールジョイントを使っていますから滑らかです。」
「これをパワースーツに使えますか?」
「基本的には機構は移植すればいいし、信号は筋肉から取ってもいいし、動作のアシストでいいならセンサーもいらない。その辺はソフト次第でどうにでもできる。
サーボモーターだから0.1ミリ単位で動かせる。軍事用なら例えばカメラを連動して、ロックオン状態を保つこともできる。船の上でも照準を離さないぞ。」
「それはいい。開発にはどれくらいかかりますか?」
「時間か?金か?」
「両方ですね。」
「時間なら試作品までに半年は欲しい。金はよくわからん。財団のほうに聞いてくれ。」
「それでは、契約する方向で財団と話をします。」
「ちょっと待ってくれ、一つだけ問題がある。パワースーツにした場合電力をかなり食う。稼働時間が短いがそれでいいのか?」
「それは私どもでも問題にしていました。ここに来る前にこのようなものを見てきました。」
そう言って、午前中に見てきたJAXAの動画を見せた。
「小型水素ガスタービンエンジンにジェネレーターをつけてもらいます。これなら電力不足は解決できそうだと思っております。」
「これなら大丈夫そうだな。水素さえ補給すれば無限に動かせる。」
「では、契約に移行しても問題なさそうですね。」
「ああ、それはお任せします。私は仕様通りに物を作るだけです。」
「では、よろしくお願いします。」
パワースーツも開発の目途がついた。
帰り道に霧島は渡辺に言った。
「すごく助かりました。私はバッテリーでモーターを動かすことにこだわり過ぎていたようです。そこからの脱皮ができませんでした。でも、あなたは違った。目的のために手段を択ばなかった。その広い視野がうらやましいです。」
「いやいや、今回はたまたまよかっただけですよ。私も装備品の調達でたくさんの会社で見てきましたが、ほとんどはあと少しの段階で行き詰ってしまいます。」
「これで少しは陸防の助けになるな。」
霧島は自分に言い聞かせた。




