第六話 銀座デート
霧島は翌日久しぶりにゆっくりと寝た。そして土曜日に待ち合わせ場所の有楽町駅に行った。待ち合わせ場所にはすでに葵が待っていた。
「信二、遅いよ。」
葵が声をかけた。
「遅いって、約束の時間に未だ5分あるじゃない。」
「15分前には待機って言われてない?」
「まあ、そうだけど。プライベートな時間まで持ち出すなよ。」
「まあね。制服を着てこないだけましか。」
葵は笑いながら言った。
「久しぶりだからおいしいものが食べたいな。銀座に行きましょう。」
二人はしばらく歩いた後にえんじ色のビルのパーラーに入っていった。昼前だから土曜と言っても来客は少なかった。
隅のテーブルに二人で座り一緒にメニューを見ながら、何を食べるか相談していた。
食事も終わり、コーヒーを飲みながら葵が話をした。
「しばらく会えなくなるかもしれない。」
「え、どうして?」
「南の島の駐屯地に移動になるらしいの。」
「葵がか?」
「いいえ、中隊ごと移動。」
葵は昨日の事を思い出していた。
葵は朝霞駐屯地の第一レンジャー中隊の隊長である。その日葵は駐屯地の山南司令に呼ばれた。
「如月中尉、日程はまだ明確にできないが、中隊ごと石垣島に派遣することになった。詳細は極秘計画なので今は話すことができない。もちろん隊員に話すことも禁止だ。中隊長である君にだけは伝えておく。以上だ。」
葵は何か大きな役回りになるとワクワクしていた。しかし、それを婚約者と言え霧島に話すことはできない。
「機密事項の塊で、私も詳しく知らされていないし、これ以上も話せないの。」
霧島はぎくりとした。
―――南の島は石垣島か?葵のレンジャー部隊の成績から、白羽の矢が当たることは目に見えていたはずなのに、うかつだった。
一昨日の渡辺や松野の言ったことが頭によみがえってきた。喉がカラカラになって、グラスの水を一気に飲みこんだ。
「どうしたの?」
葵が心配そうに尋ねた。
「いや、寂しくなるなって。」
「しょうがないじゃん。戻ってきたらまたデートすればいいよ。」
「そうだな。」
「この後、買い物したいから付き合ってよ。」
「どこにでも行くよ。」
二人は店を出て、銀座の街を歩いて行った。
―――その機密作戦の首謀者が俺だとは言えないし、もちろん止めることもできない。軍人である以上仕方のないことだ。無事を祈るしかない。
二人は交差点の角のデパートに入り、あれやこれや見たうえで、お揃いのチャームを買った。
「これを認識票と一緒につけるのが女子の間ではやっているの。私も真似したくなって、いやだった?」
「いや。俺も認識票につけておくよ。」
「ありがとう、これでいつもつながっている感じがするね。」
二人はまた有楽町の駅で別れた。
言葉では言いようのない恐怖感が霧島を襲った。
「中里さんにも言えないな。」
言えば、中里は裏で手をまわしてしまうだろう。霧島はそういう扱いが一番いやであった。
待ち合わせの葵




