Cr3-23
「恥ずかしがることないって。
骨抜きにしてやりな。
アンタ、素質ありそうだ。」
「そっ······?!」
「持っている武器は、使わなきゃ
もったいないよ?アンタには、
可愛らしくて綺麗な顔があるじゃないか。
私は、これだけど。」
ぷるぷるん、と。
その、柔らかそうで豊かな山が二つ。
目の前で震える。
それだけでもう、目眩がした。
確かに、立派な武器だわ。
「あの堅物のラウンでさえも、時々
物欲しげに見てくるからねー。
ま、臆病者だから、何もしてこないけど。」
「えっ、と······あの······」
「ねぇ。マグリヤでは
そんな地味な服が流行ってんの?
もっと、こんな風に
悩殺するやつ着るべきだね。
そしたら、王子サマ
かなり喜ぶと思うけどねー。」
「······」
もう、何て言ったらいいのか分からない。
ただ、分かるのは。
この女性は、良いも悪いも。
凝り固まったものを掻き乱してくれる。
「後悔のないように、楽しみな。
いつ、何が起こるか分からないからね。」
そう言葉を投げた声音は。
からかうような響きは、含まれていなかった。
恐る恐る視線を向けると、
大きな琥珀色の双眸が映る。
その瞳の奥に揺らぐ、小さな炎が。
ほんの一瞬だけ見えた気がした。
「王子サマを、支えてやりな。」
そして、急に。
そんな、真面目な表情で言われて。
調子が狂う。
「······はい。」
「解してやるのも、従者の仕事だ。
さぁ行きな。」
ぽん、と。背中を押され。
その反動で、シェライアは立ち上がる。
何か言わなければと、視線を向けた。
再び寝転がったキルケは、
両腕を枕にして瞼を閉じている。
何か、掴めない女性だ。
でも。どこか、温かい。
お陰で少し。気持ちが、軽くなった。
彼女は素直に、部屋を後にした。
廊下を歩いてすぐ、
彼がいる部屋の前に辿り着く。
少し、迷う。
だが、キルケに告げられた言葉が
背中を押す。
そう。解してやらなければ。
怒りの炎で、我を失わないように。
コンコンコン、と。扉を叩いた。
返事は、ない。
出てくる気配も、ない。
こうなると、いつもは
引き下がるところだ。
でも。今は。
解してやらなければ、と。
使命感が生まれている。
「シェルです。入りますよ。」
今は、従者として。
彼を、支えたい。
そっと扉を開け、部屋の中を窺うと。
彼は窓辺に立っていた。
外を向いたまま。こちらに、顔が向かない。
入ってきた事に、気付いているのだろうか。
それすらも、耳に入らないのか。
「······トウマ。」
呼びかけてみる。
だが。反応は、ない。
私の声さえも、届かないのか。
だけど。届けなければ。
「······信頼していた事を、責めないで。」
例え、裏切られたとしても。
目を曇らせては、何も見えない。




