Cr3-22
それぞれに、部屋が
割り当てられているらしく。
キルケは、この話し合いの場として設けた
部屋を使うのか、ベッドに留まったまま
動かなかった。
思いを抱えた様子で、ラウンは
何度も頭を下げながら去っていった。
それを追うようにして、トウマも
部屋を後にする。
思い詰めた、その背中を目にして。
何と話しかけたらいいか分からず、
シェライアは口を噤み。
そのまま、静かに見送った。
内通者がいる可能性に。
信じ難いけれど、濃厚である現実に。
私以上に彼は、
衝撃を受けているだろう。
築き上げてきた、マグリヤの平穏が。
皮肉にも、身内の裏切りで
崩れるなんてことは。
決して、考えたくなかっただろうから。
······
それは、私も同じだわ。
このまま、部屋に行ってしまうと。
気持ちが沈みそう。
ベッドに寝転がるキルケに目を向け、
彼女は言葉を紡いだ。
「······あの。少し、
お話してもいいかしら?」
控えめに申し出る彼女を、
ちら、と一瞥し。
身体を起こすと、笑みを浮かべた。
「いいよ。とりあえず暇だから。」
ここ、座りな。というように
ベッドの端をポンポンと叩いている。
素直に近寄り、そこへ腰を下ろした。
すると。
肩の所まで近く、顔を近づけられる。
「ねぇ、アンタさ。本当に従者?」
囁かれて。
心臓が跳ね上がる。
まさか。
······いや。落ち着いて。
見透かされているような、気がするのは。
先程目の当たりにした洞察力のせいで。
「······どういう、意味?」
「何ていうか、王子サマと
同じニオイがするんだよね。」
同じ、匂い······?
「えっ」
「高貴なニオイさ。私たちには、ないやつ。」
······
落ち着け。
「貴族出、というのも
あるのかもしれないわね。」
「あー。なるほど。」
「トウマ様を含め、王族の方の身の回りを
お世話する者は······限られているから。」
でまかせ、だけど。
筋は通っているはず。
「じゃあ、お気に入りってやつか。
こんな危ない架け橋渡るの、
一緒に連れていくくらいだし。
王子サマがアンタに向ける目、
絶対好意持ってるもんね。」
それは、衝撃発言だった。
シェライアは思わず、キルケと距離を置く。
「あははっ。警戒することないって。
ここだけの秘密にしておくさ。」
「あ、あの、それは、絶対にないわ。」
「いやー?あんな熱っぽい視線に
気づかない女なんて、いないだろー?」
「ち、違う、から······」
「あ。分かった。もう既に、
いい関係なんだ?やるねー。
この旅路は、逢引きみたいなもんだ。」
悪びれなく並ぶ単語の、刺激が強すぎて。
彼女は、この上なく火照ってしまう。
その様子を眺めて、キルケは
楽しそうに笑った。
「顔真っ赤!あははっ!
まだまだこれからってとこか?
禁断の関係、始めるのは。
いいねー。そういうの、嫌いじゃないよ。」
この女性の言葉は。
すごく、すごく、心臓に悪すぎる。




