Cr3-20
受け入れるのか、否か。
決断を待つ皆の注目に、
深い溜め息が漏れた。
「······解決に至りましたら、同盟は
限りなく実現に近づきますか?」
思い悩む使者の姿を、真っ直ぐに見据えて。
トウマは頷く。
「ダナントの名において、誓う。
至れば、どの国よりも貴国を優先し
友好関係を築く。それは、
『エ・ルミィス』の加護を得るのと同等だ。」
告げられた内容を噛み締めるように、
間を置いた後。
ラウンは、彼の視線に応える。
「······承知致しました。
使者を介さず表立たれた
トウマ様のご覚悟、このラウンが
命を懸けてお受け致します。」
「有難い。」
「い、いえ。こちらこそ、
恐れ多いことでございます。」
彼は仕切り直すように一呼吸し、紡いだ。
「書簡の内容は毎年、誕生祭に是非
参加したいという要望だった。
祝いの言葉と、マグリヤとの友好関係を築く
良い機会にしたい、と。」
「······はい。」
「我々は『エ・ルミィス』を保護する為、
直に関わるような交流を断っていた。
故に、断りの書簡を返していた。
そなたも、それは察していただろう。
しかし今回は、その後も
書簡が届けられた。
“せめて面白いものをご覧にいれましょう”
という、不可解な言葉だけが記されて。
何のことか理解できず、我々は返信せず
その日を迎えた。」
「と、トウマ様。お待ちください。」
話を止めたラウンの表情は、困惑している。
「私が介したのは、一度だけでございます。
正式に表立つ使者は、現在私一人です。
他の者が介することは、決して
ありません。」
紡がれた、その事実に。
二人は目を見開いた。
「では······二度、書簡を届けた事実は······」
「ございません。それが事実ならば、
由々しき問題になります。」
思わず、顔を見合わせる。
では、その書簡を届けた人物は、一体。
「内通者がいる、と考えた方が
自然だろうね。」
混乱する中に落とされた、よく通る声。
「しかも、中枢。
国の事情を詳しく知っている奴だ。」
キルケが告げた内容は、とても。
とても、信じ難い。
だが。その紡ぎは、容赦なく
響いていく。
「で?その、面白いものって
何だったの?」
言葉を失う程に、浸透したが。
彼は、何とか吐き出す。
「······誕生祭には、“授与の儀”という
『エ・ルミィス』が編み出した物を
賜わる儀式がある。その最中、
突然見知らぬ男が現れて······シェライアを
攫おうとした。」
「何てことだっ!」
再びラウンは、頭を抱えた。
キルケが落とした疑惑に、
彼女は囚われる。
じゃあ、二度目の書簡は。
“せめて面白いものをご覧にいれましょう”
という、言葉が届けられたというのは
事実無根で。
内通者が、仕掛けたということ?
信じ難い。本当に、それは。
考えたくない。
······でも。
その考えは、腑に落ちるところがある。
あの人が、誰にも目に触れず
マグリヤへ乗り込み。
無傷で、帰還したというのも。
その、内通者がいて。
手助けをしたならば。
全て、上手く。繫がる気がする。




