Cr3-16
普段なら。護衛の為に告げたのだと
思うところだ。
だが、なぜか。
“傍を離れるな”という言葉だけが、
強調されて響いた。
それに、鼓動は。乱れるばかりで。
まるで、病気だわ。
転機は、思いもよらない時に訪れる。
三日という船旅は、二人に
様々な心境の変化を起こした。
血筋と環境に従い、知らずに燻っていた感情。
それが浮き彫りになり、身体と連動する。
戸惑いしかない今だが。
少しずつ、自覚する事になる。
それは、切っても切れない、と。
昼前。船は、港町タランの波止場へ
無事に停泊した。
進んでいた時は、心地良い潮風が吹いていた為
気づかなかったが。
少し、蒸し暑さを感じた。
快晴という天候も、後押ししている。
建物の造りが、統一されていて綺麗。
ゼスタのような、ごちゃ混ぜ感がないわ。
町並みを一望しながら、シェライアは
船を降りていく。
ついに、大陸へ踏み入れるのね。
高揚する気持ちと、
まだ波に揺られている感覚で
ふわふわしながら、地上へ降り立った。
先を行くトウマの背中を目に映し、
桟橋を歩いていく。
他の乗客たちも同じく混じっていたが、
マルライーナの姿は見受けられなかった。
『ロ・フヴァ』が現れた時から、
一度も顔を合わせていない。
まだ、船に残っているのかしら。
「失礼致します。」
桟橋を渡り切った所で、
彼を呼び止める者がいた。
自動的に、彼女も足を止める。
「私は、ラウン・ヴェリスと申します。
国の使者を務める者です。」
装備する鎧や、背の高さと体格は
彼と似ているものがある。
ただ、頭を垂れる仕草と
微笑みを浮かべる雰囲気は柔らかく。
決して、威圧を与えるものではない。
額が見えるよう綺麗に後ろへ流し、
耳元で切り揃えられた薄茶色の髪。
瞳も、同じ色だ。
「······見覚えが、あるな。」
ぽつりと、彼は漏らす。
それに対して、ラウンと名乗った男は
嬉しそうに綻んだ。
「はい。一度、御目に掛かっております。」
「書簡を届けに来た者か。」
「その通りでございます。
再びお会いできて、光栄です。」
出迎えとしては、適切だろうか。
彼と顔見知りであること。
それに、大勢で迎えるという
仰々しさはなく。配慮がある。
シェライアは静かに見守っていると、
ラウンの視線が向けられた。
目が合うと。ふわりと、
優しい微笑みを浮かべて、会釈される。
「従者だ。」
「可愛らしく、美しい方ですね。」
いきなり、で。
こんなに、はっきりと。
面と向かって言われるのは。
慣れているはずもなく、彼女は
頬を赤く染めて俯く。
「······あまり、そういう事は。」
「あははっ。申し訳ありません。
素敵な花を見つけてしまうと、つい。
大変失礼致しました。」
彼の表情は窺えないが。
声音から、明らかに不機嫌なのが分かる。
斬りかかってしまうのでは、と。
そう思ってしまう程に。
そんな彼を前にしても、ラウンは
笑顔を崩さなかった。




