Cr3-15
装備を身に着けている彼が
出入り口に立つと、尚更狭く感じる。
そのせいなのか、中へ入ろうとはせず。
目を合わせたまま、じっと動かない。
「······御苦労さま。」
均衡を破ろうと、労いの言葉を掛ける。
「ずっと、見張りを続けたのでしょう?」
「······ああ。だが、深夜まで、だ。
船長は代わると言ってくれたのだが。」
······
そうだったのか。
その頃は、寝落ちしていて気づかなかった。
「食事を、いただいたわ。」
「美味かったな。」
「ええ。とても。」
それから、少し。しんとする。
どうも、ぎこちない。
「······もう既に、大陸が確認できるらしい。
船上へ出ないか?」
その誘いには、打開する効果があった。
シェライアは、目を輝かせる。
「ええ。見に行きましょう。」
彼女が出入り口に近づくと、トウマは
必要以上に身を引いた。
距離を取る事に気づきながらも
彼女は、船室から出て先を歩く。
平静そうに見えて、実は。
昨日のこと、引きずっているのかしら。
私も、そうなのだけど。
······
いつも通りの距離感が恋しいと、思う反面。
彼の心の内が少し垣間見えたという、
こそばゆさがある。
どう在るべきか、なんて。
分からないのに。
妙に嬉しいのは、なぜだろう。
船上に出ると同時に、強めの風が吹いた。
昨日から船室に籠もっていたせいか。
とても涼しく、心地よく思えた。
二人と同じように、大陸の姿をみようと
既に乗客たちが群がっていた。
トウマの姿を確認し、とある一人が
笑顔で近づいてくる。
「昨日は、本当に助かったよ!
若いのに強いんだな!」
「······運が良かっただけだ。」
「がはっ!運か?!面白い!
ますます気に入った!」
その一人がきっかけで、同じように次々と
感謝を伝えようと囲む。
彼女は、邪魔にならないようにと
その人集りから外れようとすると。
制するように、彼の手が腕を掴んだ。
「皆で、大陸を見よう。」
「ああ、そうだな!」
「良い旅を。」
「お兄さんも!」
微かに映り込む大陸へ、
目を向けさせる一声。
それに、乗客たちは素直に従う。
彼女が彼に目を向けると、その手は引いた。
あまりにも自然に起こった為、
呆然と見つめていると。
ちらっと目を向けて、紡ぐ。
「······見ないのか?」
尋ねられて、我に返る。
すぐさま、言われた方向へ視線を移した。
本来なら、大陸を目にして。
期待で膨らませるところなのだが。
波の音と。
高鳴る心音が、重なる。
何も、告げてはいない。
静かに眺めたかったな。など。
伝えていない。
だけど、まるで
伝わったかのように。
さり気なく。皆を、はけさせた。
その、心遣いは。
常日頃、受けていたものと変わらない。
なのに。
なぜ、こうも。良く映るのか。
狂わせるのか。
腕に触れた、彼の熱が。
妙に残って、ソワソワするのも。
「······昨日のように、『ロ・フヴァ』が
現れる可能性がある。
傍を、離れるな。」




