Cr3-14
私は、何もしていないのに。
「是非、お受け取りください。
美味しいですよ。」
それは、分かる。
分かるけれど。
受け取っていいものか、躊躇っていたら。
ぐうぅぅ、と。
お腹の虫の方が返事をした。
「ぶふっ。ほら、お腹は正直ですよ。
遠慮なくどうぞ。」
「······はい。ありがとうございます。」
これは、恥ずかしい。
真っ赤になりながら、彼女は受け取った。
「食べ終わったら、
外に出しておいてくださいね。
それでは。」
終始にこやかなまま、男性は去っていった。
シェライアは、トレーを机の上に置いて
向かい合うように座る。
美味しそう。
ほんわかな食事たちを、
愛しそうに見つめた。
トウマは、船室に戻ってきていない。
船上で、食べているのかしら。
彼の元で一緒にいただこうかと、頭を過る。
しかし。それはやめておこうと、
思い直した。
今は。顔を合わせない方が、
いいのかもしれない。
味が、分からなくなりそう。
······
冷めない内に、いただこう。
そっと匙を取り。
ゆっくりスープをかき混ぜて、掬う。
彼女は、肉々しいものが苦手であるが。
唯一魚介は、食することができた。
感謝しつつ、口に含む。
ふわりと広がる、優しい旨味。
思わず、笑顔になった。
これ、お城で食べていたものより
美味しいかもしれないわ。
彼も、同じものを食べているのよね。
······
一緒なら、分かち合えたのかも。
少し、後悔する。
きっと、彼も。
美味い、と。綻ばせているだろう。
その顔を思い浮かべて、頬が緩んだ。
顔を合わせず、それぞれ味わった
温かい食事は。
二人にとって、忘れられない思い出となる。
翌朝。
穏やかな漣の音で、
シェライアは目を覚ました。
揺られている感覚に慣れたのか、
温かい食事が効いたのか。
三日目にしてやっと、熟睡できた。
トウマが船室に戻ってくるのを
待っていたが、それらしい音を聞かなかった。
訪ねてみよう。
彼女は、起き上がる。
ただ、その前に。
そのまま寝落ちしてしまった為、
身なりが。整えないと。
習慣は恐ろしい。
毎朝、メイドたちが整えてくれていた為
それが身に付いてしまっている。
ここに、ティグロン茶は、ない。
それが、寂しいと思ってしまう。
何とか身なりを整え終わった頃に、
コンコンコン、と扉を叩く音が響いた。
「おはよう、シェライア。起きているか?」
いつも聞き入れている、
馴染み深い声なのだが。
環境が変わったせいなのか、
昨日の出来事が引きずっているのか。
いちいち鼓動が、波打ってしまう。
「おはよう。起きているわ。
ちょっと待って。」
手鏡で、自らの姿を確認する。
これも、旅用に生み出した必需品である。
しまったわ。
私から訪ねるはずだったのに。
思った以上に、時間がかかってしまった。
······
よし。大丈夫。
「······どうぞ。」
応答した後、扉は控えめに開けられた。




