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Cr3-12


私という存在は、彼の行く末を

険しいものにしている。

それは、一生を付き纏う程に。


呪いだ、と思った。

私が、『エ・ルミィス』である限り。

彼が、ダナント卿の子息である限り。

その絆は、もう義務だと。


だから。それが解放できたら、と。

願いを籠めて、剣を生み出した。




「しばらく俺は、見張ろうと思う。

 お前は船室へ戻れ。」


「······」




距離を置くことで。

その呪いは解けるのだ、と。

思い込んでいた。



だけど。




「······分かったわ。」




素直に従い、彼女は踵を返す。




私にとって、彼は。光そのもので。


彼が存在しない道を行くのは。

暗闇の中を、歩くようなものだ。



そこまで、大きく。深く。


必要としている。





何者でもない、私たちに残るものは。

それは、解き明かせないものだとしたら。



どう在るべき、なのだろうか。
























『ロ・フヴァ』が現れたという事実を、

忘れてしまう程に。

あれから何事もなく、

穏やかな時間が流れた。



船旅は、二日目の夜を迎える。



その、闇夜に溶け込むよう

帆柱に背を預けて佇む青年は。


昼間、僅かに掴んだ温もりを

確かめるように。

未だに夢ではないかと、

離さないように。腕を組んでいた。




事の流れは、不本意でも。


歓喜してしまった。

思わず、抱き留めてしまった。


抑えきれなかった。



伝わった、温もりは。

いとも簡単に、箍を外した。




理屈は、通らない。

恐らく、伝わってしまった。


激しく鳴る心音も、聞かれただろう。




偶然にも『ロ・フヴァ』が現れて。

逆に、救われた。


あのまま、現れなかったら。

どうしていたかと、考えると。





彼は、溜息をついた。





思った以上に、膨れ上がっていた。


それが、溢れ出した。


いずれは。抑えきれなくなっていた。



そう、割り切るしかない。






ふと、気配を感じた。



そして、ふわりとミルクの匂いが届く。




「せっかくの船旅を、本当に申し訳ない。

 腹の足しにしてくれ。」




木製の器に入ったスープと、

柔らかそうな白いパン。


それが乗ったトレーを、船長は差し出した。




「······ありがとう。」


「いやいや!礼を言うのはこちらだ!

 ようやく手が空いたもんで······

 もう流石に、代わるぞ。」




受け取った彼は、ふと思う。




そういえば、シェライアは。

食事を取ったのだろうか。




「······連れが、いるのだが。

 食事を取っていなければ、

 同じように渡してほしい。」


「ああ!分かった!どこの船室だ?」


「奥から数えて、二番目だ。」




それを聞いて、なぜか

目を見開いている。




「······まさか、あんた······いや、

 あなたの部屋は······一番奥、ですか?」


「そう、だが。」




すると船長は、慌てて

深々と頭を下げた。




「何てお詫びをしたらいいのか!

 俺は何て、物言いをっ······!」





その様子から、彼は察した。




検問兵から、自分たちが

船に乗るという情報は、流れていたはず。


ただ、問うことを許さず。

良い部屋を用意しただけで、

顔は割れていなかったのだろう。





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