↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/84

Cr3-11


「ここで、『ロ・フヴァ』に遭う道は

 ······限りなく、無いに等しかった。」




独り言のように、紡がれる言葉。




「想像以上に、眩しかったのだろうね。

『エ・ルミィス』という存在は。」




その単語は、彼女の胸を貫いた。




「マルライーナ。」




一体、それは。どういう意味で。



訴えるような眼差しを、

受け止めるように。


茶褐色の宝玉が、シェライアを映す。




「逸れしものは、救いを求めて

 そなたの前に現れるだろう。

 だが、案ずるな。

 若き獅子が傍に在る限り、道は開かれる。」




しわがれた声音のはずが、瑞々しく響き。

彼女に衝撃を与えた。




じゃあ、今。

彼が対峙している、『逸れしもの』は。


私が、呼び寄せたということなのか。




「あぁ、しまったねぇ。休業だったのに。

 ······くれぐれも、自分が悪いとは

 思わないことだよ。」




そう言い残して、マルライーナは

船室の方へ歩き出す。


その行動が理解できず、彼女は

呼び止めようとしたら。


聞いたことのない耳障りな叫び声が

響き渡り、思わず振り返る。



トウマが、剣で斬ったのだろうか。


『ロ・フヴァ』の、大きな足が一本。

船上で、ビチビチと跳ねていた。



傾いていた船体は、水平に戻っている。



目を逸らしている内に、恐らく。

彼が剣で、『ロ・フヴァ』を

引き離したのだろう。



船長率いる乗組員たちと乗客たちは、

歓声を上げている。




「良い腕だ!」


「助かったよ!ありがとう!」


「船長!幸い、負傷者も

 船体の損傷もありません!」


「よしっ!······みなさん!

 万が一の事がありますので、しばらく

 船室へお戻りください!」



トウマを讃えながら、乗客たちは

船長の言葉に従って戻っていく。



「心から礼を言う。······申し訳ないが、

 また現れたら······」


「ああ。構わん。」


「有難い!」



彼は、頭を下げる船長に応えつつ

弥帆へ視線を注いでいた。

まだ、警戒を解いていない様子だ。



その勇姿を、彼女は見つめる。




若き獅子とは、言わずとも。

彼のことだろう。




“傍に在る限り、道は開かれる。”




どこまでも、私は。


彼を、束縛してしまうということなのか。




“「くれぐれも、自分が悪いとは

  思わないことだよ。」”




······そう、言われても。


割り切れるものではないわ。





跳ねていた『ロ・フヴァ』の大きな足は、

いつの間にか姿を消していた。


だが。確かに在ったという、痕跡の海水が

床を濡らしている。




『ロ・フヴァ』は。

自然へ還りたいと、願っているのだろうか。


精霊たちのように。

声が、聞けたらいいのに。





ようやく彼は、剣を鞘に収めた後。

彼女へ視線を向け、歩み寄ってくる。



途端に、先程受けた抱擁を思い出し。


痛い程に、心音が狂う。




「思ったよりも、容易かった。

 十分に対応できる。」




剣を振るい、手応えを実感できて

嬉しかったのだろう。


彼の表情は明るい。




「無事で、良かったわ。」




騒ぐ鼓動を精一杯抑え込んで、

彼女は微笑んだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。