Cr2-30
「······消えなくても、いいの。
これは、戒めだから。」
あの時のことを忘れるな、という
大事な傷痕。
「あなたこそ、背中に残っているでしょう?」
私よりも、深く。
「謝らなければならないのは、私の方よ。
私のせいで······」
呪縛を、強めてしまった。
「色々、背負わせて。ごめんなさい。」
注がれるものが、何なのか。
彼女が全てを理解するには、至らない。
それを把握しながらも、彼は。
心血を注ぐように、傷痕へ翳す。
「良い旅にしよう。」
優しく、低く響く声音。
じんじんと伝わる、彼の熱。
注がれるものに、胸の奥が疼きながらも。
彼女は、微笑む。
「ええ。」
その綻びを見届けて。
彼は綻ぶと、傷痕に翳した手を
ゆっくり離した。
「そういえば、来るのが遅かったな。」
解放されて、普段の距離感に
戻った気がした。
だが、まだ。熱が、残っている。
それを感じて、疼きながらも
ブーツを履き直す。
「楽しくって、つい。」
「やっぱり、道草食ってたのか。」
「でも、そのお陰で発見できたのよ。
それに、精霊にも会えたわ。」
「······結果的には、良かったが。」
「はい。ごめんなさい。」
日常、彼が側にいる。
それに慣れすぎて、分からなかったけれど。
呪縛がなければ。
私たちは、こんなにも。
打ち解けることができただろうか。
ファーランのように。
お互い何も知らないまま、出会っていたら。
こんなにも。
そう考えると、急に。
きゅう、と。苦しくなった。
そして、じんじんと。
熱が、浸透する。
「腹減ったな。」
そう、唐突に投げられて。
思わず、クスッと笑った。
「私も。」
「肉がいいな。」
「私は、野菜たっぷりのスープがいい。」
「それでは、満たされんぞ。」
「十分、満たされるわ。」
「だから、成長が止まっているのか。」
「あなたは、育ちすぎよ。」
何気ない、やり取りが。
こんなにも、嬉しくて。安心するなんて。
傍に、いられることは。
当たり前じゃない。
この時、彼女は初めて。
彼に繫がるものが。
呪縛という鎖だけでは、表せないことを
自覚する。
それが、何なのか。
疑問を持つことになる。
二人の旅は、始まったばかりである。
見えない場所で進んでいく、陰謀も。
まだ、知る由はない。
ただ一つ、起こりうるのは。
呪縛という視点では、窺えない景色を。
要するか、要さないか。
岐路に立たされるという事だ。
道標は。
当然、二人の中に在る。
Create2終わりです。
ここまで読んでくださり、
本当に∞ありがとうございますm(_ _)m。・゜・・゜・。∞
またごゆるりと
よろしくお願いいたします。




