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鏡というものは、不思議だ。
自分の姿を確認できる道具として
存在するが、それは反射という働きで
可能にしている。
しかし実際は、どうだろう。
ありのままを映せるのは、他人だ。
自分自身は、反射した姿を
捉えることしかできない。
だから、今映る姿は。
本当に自分なのだろうかと、疑ってしまう。
「はぁ······お美しいわ······」
「すっっっごく素敵······」
「念入りに準備した甲斐がありましたわ······」
三人のメイドたちは、
着飾ったシェライアを眺めて
ほぅ、と息を漏らしている。
綺麗に結い上げられた金髪は、
色彩豊かな宝石で飾られ。
透明感のある白い肌と、
黒の刺繍が施された白いドレスが
相乗効果を生んで、一際目を引いた。
確かに、綺麗だとは思う。
だが、自分自身とは思えない。
でも、これが。他人から映る私なのだろう。
「朝食のお時間まで、
お部屋でお待ちください。」
「準備が整い次第、参ります。」
「それまで、ごゆるりと。
紅茶のおかわりは、よろしいですか?」
「······ええ。」
「では、何かございましたら
お呼びください。すぐにお伺いします。」
深々と頭を下げて、
満足気に部屋を去っていく三人。
それをシェライアは見送ると、
のろのろと特製チェアへ向かって
歩いていき、腰を下ろす。
そして、小さくため息をついた。
ベッド際にある書棚は
腰くらいまでの高さで、その上には
お気に入りの小物や時計が置かれている。
この世界の数式と時刻の区切り方は、
我々が認識するものとほぼ変わりない。
そして、孤島『エル・ラド』の気候は
大陸の中でも穏やかで、過ごしやすい。
一年中、春のように暖かく。
雨は、ほとんど降らない。
それが理想郷と呼ばれる所以だが、
『エ・ルミィス』が存在する為だと
考える者もいる。
精霊たちを使役して、住みやすいように
作り替えているのでは、と。
本当のところは、誰も知る由がない。
この格好だと、下手に出歩けない。
朝食摂るの、着る前が良かったのでは。
汚してしまいそう。
日常なら、朝食が終わったらすぐに
トウマを引き連れて
城の外へ出歩いている。
控えなさい、と両親に言われ続けているが。
ダナント卿は、微笑ましく
受け入れてくれている。
意外と、理解あるのよね。
トウマが付いているっていうのも
あるのかしら。
ちらっと、書棚へ目を向ける。
ここにある本は、既に読破している。
何回読み返したか、数え切れない程に。
早く、書籍室へ行きたいわ。
読み漁りたい。
「······はぁ······」
窮屈だ。
発狂しそう。
また、ため息が漏れそうになった時。
トントントン。
扉をノックする音が響いた。
控えめな感じと、間隔のリズム。
誰が訪ねてきたのか理解すると、
若干表情を明るくして応える。
「どうぞ。」
早く入って。




