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P−4


口を濯ぐと、自由になった口で



「普段着で十分よ。」



と、紡いでみたが。


それぞれの分担を終わらせた三人は

お構いなしに、いそいそと

綺麗な細工が施された箱を

次々に運び入れる。



「······ねぇ。」


「私たちにできることはないかと、

 考えてまいりました。」

 

「お美しいシェライアさまを、

 より麗しく······」


「お召しになられたお姿を

 何度も想像しながら、

 お取り寄せいたしました。」



きらきらと輝かせる視線が、痛い。



「ただの、誕生日ってだけよ?」



今日は、少しだけ抵抗してみた。


成人になったんだから、という

バネを付けて。



すると、余程心外だったのか

三人は驚いた表情をした後、詰め寄る。



「シェライアさまっ!」


「ただの、ではございません!」


「お誕生日、そしてご成人という

 かけがえのない一時であります!」



その妙な圧に、今度はシェライアが驚いて

肩をすくめた。



「ご······ごめんなさい。」



と、謝ってしまう程に。



「麗しく尊くご成長なされたお姿を、

 更に美しく、という気持ちで

 一杯なのです。」


「私たちの意思を、どうか

 お汲み取りください。」


「どうか、是非。」



彼女たちは、とてもとても必死だった。


断ると、本当に

命を絶ってしまうのでは。


そんな危機感が押し寄せて、すぐに折れる。



「······分かったわ。お願い。」



私が悪かったわ、と謝罪気味に告げると。

三人は再び、ぱぁっと明るい笑みを浮かべた。



「はい!お任せください!」



狂いなく、返事が揃う。



なすがままに。


もう、それしかない。



「シェライアさまは、白が

 よくお似合いですものね。」


「あぁ、でも黒も外せないわ。

 ご成人という節目ですもの。少し、

 ピリッとさせた方が。」


「ええ。その為に、刺繍に拘ったのよ。」


「まぁっ!素敵っ!流石ねユア!」


「······

 紅茶、もらっていいかしら。」


「あぁ!申し訳ござません!」




特製チェアの前には、それこそ

特製テーブルが置かれている。


恭しく目覚めの紅茶が注がれ、

カップから湯気が漂った。

ふわりと、馴染みのある良い香りが

癒しを生む。



わいわいと楽しそうに準備を始める

三人の様子を、シェライアは

他人事のように眺めた。



マグリヤ国産の、ティグロン紅茶。

その芳醇さを味わいたくて、

甘さを足すことはしない。


一口含み、じんわり染み渡るのを感じた後に。

コルアと呼ばれる赤く丸い果実を

一つ摘んで、口に含む。


甘酸っぱいけれど、ほのかに苦い。

これが、ティグロンと合う。




そういえば。この三人の誕生日って、

いつなのかしら。



聞こうとして、止めた。



“おめでとう”という言葉を紡ぐには、

申し訳なさの方が勝ってしまう。


私という存在の為に、彼女たちの人生を

縛り付けているから。



······


そこまで考えるのは、もう。


重症なのかもしれない。








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