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「シェライアさま。おはようございます。
お誕生日おめでとうございます。」
毎日、寸分の狂いもなく同じ時間に訪れて
一日の始まりを告げる、三人のメイドたち。
彼女たちはシェライア専属で、
身の回りを世話している。
物心つく前から、変わらない顔ぶれだ。
細長くてクリクリ頭のコーリン。
ふくよかでモチモチ肌のソラル。
纏う全てがピシッと真っ直ぐなユア。
みんな同じ角度で恭しく頭を下げる光景は、
一日の始まり。
それを、定位置である特製チェアから
腰掛けた状態で眺めて、告げる。
「おはよう。ありがとう。」
仮面化している微笑み。
それを貼り付かせたら、どんな時でも三人は
ぱぁっと顔を輝かせる。
「誠に、一段とお美しくなられました!」
「心から嬉しゅうございます!」
「今日の誕生祭、皆
心待ちにしておりました!」
向けられる、少しの陰りもない敬い。
偽りがないというよりも、
崇拝して疑わない。
自分が命を断て、と突きつけたら
喜んで受けるのだろうか。
もしそうだとしたら、多分。
冗談でも、口にしてはいけない。
あなたたちの人生、それでいいの?
と、口にはできない問い掛けを、
心の中で吐き出す。
コーリンが運んでくる、
銀製の三段式ワゴン。
これは、シェライア専用である。
上段は、水が入った磁器と
ふかふかタオル。そして木櫛。
中段は、目覚めの温かい紅茶と
フルーツが乗ったトレー。
下段は、歯磨きセット。
ほとんどの行動において、
メイドたちが間接している。
これが普通ではない事を知ったのは、
トイアールとのやり取りが始まった頃からだ。
樹海に住んでいる同胞たちは、
こんな過保護な暮らしを
していないというのに。
族長の父と、随一の力を持つ巫女の母。
その間に生まれたのが、私だが。
国の象徴、万が一の事態に備えて
血筋を保護するという為に
匿われているというのは。
ある意味、生贄ではないのか。
いつものように洗面を済ませると、
ユアがタオルで丁寧に水気を拭き取る。
見計らってソラルが、優しい手つきで
シェライアの髪を梳かし始めた。
「失礼いたします。」
コーリンからの呼びかけで、口を開ける。
“歯磨きいたしますよ”という合図だ。
物心付く前、いや、きっと
生まれた時から。これが日常で。
過保護すぎるなんて
気づかなかった時の私は、滑稽だ。
みんな、自分でやることなのに。
そう思って反抗した時期があったが、
泣きながら“どうかお願いします”と
懇願されて。そこまで尽くす理由は、一体。
でも、このままだと本当に自害しかねないと
思い、されるがままになった。
メイドたちは、私の世話をする事が
生きがいであり、誇りになっているのだ。
「今年の式典は、
ご成人になられることもあって
盛大に執り行なわれるそうですよ。」
「シェライアさまに是非と、民たちから
お祝いの品も多数届いておりますわ。」
「最高のお召し物をご用意致しております。
更に美しいお姿を、是非
皆にご披露いたしましょう。」




