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Cr2-26


「トウマっ!!」



高く澄んだ声が、背中にぶつかる。



聞き馴染んだ波動を受け、彼は振り返る。



「なぜ来たっ?!」



“奴”の声を聞いて、なぜ。ここへ。



顔を隠していた布が取れ、

露わになったシェライアの表情は。


少しも怯えていない。



「皆の攻撃を、止めさせて!」




強い訴えと、目に宿す光。


それを見据えて、彼は向き直った。




「ミストランっ!!退けっ!!」




それは、怒号に近かった。


投げられたと同時に、現れた彼女の姿を

目にした将軍は。


命令に従わなければ、と。声を張る。





「皆、退けっ!!!」





服従せよ。


その威圧に、騎士たちは

強制的に手を止めて退いた。




オォォォォォッ!!



“カフ・ドランドー”の咆哮を、

一斉に浴びる。



ビリビリと振動が伝わる中、彼女は

誰よりも前に踏み出した。



「シェライアっ!!」



何をする気だ。


そんな彼の懸念を、彼女は聞き入れない。




皆の目には、ただ。


無謀にも彼女が、前に立ったと映っている。



しかし。



彼女の視界には、様々な動物の群れが

自らを取り囲んでいた。


正確には。


彼女の側に立っている、とある精霊を

中心として。



我々の見解で言うならば、その姿は。

茶褐色の毛に覆われた、大きな熊である。




『お前さん。何をそんなに

 怒っているんだい?』




それは、眠そうに。欠伸をしながら

“カフ・ドランドー”へ問い掛ける。



気の抜けた声だったが。


“それ”にとっては、

進む足を止める程の力があった。




怒り狂っていた“それ”が、急に

動きを止める光景は。


彼を始め、ミストラン率いる騎士たちを

唖然とさせた。



彼女が現れただけで。


“それ”が足を止めた、と。映る他はない。





『······ニンゲンガ、ワレワレノスニ

 ハイッタ······』



『それだけで、

 そんなに怒っているのかい? 』



『······タマゴヲ······

 モッテイコウトシタ······』



『なるほど。それは、怒るねぇ。』




卵を。そうか。

でも、そこまで踏み込んで

持っていこうとするなんて······

命知らずにも程がある。



一人、じゃなさそう。

息絶えていた人の他に、まだいたのかも。




『お前さんの卵は大きくて重いから、

 持っていけなかっただろうに。

 馬鹿だなぁ。』



『······ニンゲンハ、オロカダ。』



『そうだねぇ。だけど、お前さんも

 大概にしなさいよ。怒り狂って、

 森を滅茶苦茶にして。みんな、

 怯えて震えていたよ。せっかく、

 気持ちよく寝ていたのに······』



『······ソレハ、ワルカッタ······』



『お前さんの気持ちも分かるから、

 今回は痛み分けということで。

 もう巣穴に、帰っておくれ。』




このやり取りが行われている間。


誰も何も発さず。しん、と静まり返っていた。



何か起こっているかも、分からずに。

ただ、言葉を発さずに見守る。




“それ”は、彼女に大きな目を向けた。




『······ユルシタワケジャナイ。

 コレカラモ、オマエタチガハイルノハ

 ユルサナイ。』




あの時。


恐怖でしかなかった、“それ”は。


今思うと、ただ、仲間と家族を護る為に

牙を向けたのだと。

そう理解すると、見方が変わる。





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