Cr2-23
「私が確認して参ります。少々お待ちを。」
目を凝らしながら、ヒルドが
それの方向へ踏み出す。
シェライアは素直に、その場でカデと
行方を見守った。
衣服、と考えるのが自然だろうか。
いや。この場所に落ちているのは、
不自然じゃないか。
なぜか。どくん、どくん、と。
胸が騒いだ。
「······!」
全容を目視して、驚愕すると。しゃがみ込む。
「ヒルド。」
一体、何だったのか。
そう含ませて、カデは呼び掛けた。
「······人が、倒れている。」
絞り出すように、吐き出された言葉に。
二人は耳を疑う。
「怪我しているの?」
駆け寄ろうとした彼女を、ヒルドは
制するように両手を上げる。
「来てはなりません。
お目に、しない方が。」
「どういう事?」
「······既に、息絶えています。」
そんな。
「大陸の者か?」
青ざめて立ち尽くす彼女を置き、
カデはヒルドの元へ駆け寄った。
同様に凝視した後、眉間に皺を寄せて
対象を捉える。
「恐らく、そうだろうな。」
「······将軍に、急いで報せなければ。」
騎士たちの様子と、口にした言葉から
把握できるのは。
この事態が想定されていた、ということだ。
彼女は、息を整える。
怖気づいてはいられない。
しっかり見据えて、彼に伝えなければ。
奮い立たせて、踏み出した。
「シェライア様っ」
「なりませんっ」
制する声に逆らい、目の当たりにする。
うつ伏せに倒れた身体は。
背中を深く抉られ、真っ赤に染まり。
両手は、助けを求めるように
草を掴んでいる。
吐き気よりも。
その、抉られた傷痕に。緊迫した。
オォォォォォ······!
遠くから響く、低い唸り声。
ビリビリと、伝わる振動。
見覚えのある威圧感。
「これ、はっ······?!」
騎士たちは、
把握できていない様子である。
そう。この感覚を知っているのは。
対峙して一太刀浴びせる程の手練れか、
奇跡的に逃げ延びた者だけだ。
発せられた方向。位置からすると。
待ち合わせ場所と、一致する。
彼女は駆け出した。
「シェライア様?!」
「お待ちください!」
躊躇がなかった。
行って、何ができるのか。
分からない。
足手まといにしか、ならない。
だけど。
彼の元へ、急がなければ。
その思いしか、ない。
木々をなぎ倒し踏みつける、大きな爪。
裂けた大きな口から覗く、鋭い牙。
鱗の鎧に覆われた身体と、
背中に生えた大きな双翼。
ギラつく金色の瞳が、見定めるように
彼らを威圧している。
オォォォォォッ!!
その雄叫びは、重低音の振動を生み。
一帯を、震わせた。
「トウマさま!お下がりください!」
ミストランが、大剣を構えながら制する。
しかし、彼は一歩も引かず。
誰よりも前に立ち、腰に備えた剣を抜く。




