Cr2-21
彼と同様に見据えて、
側に控えるミストランが告げる。
「賢く警戒心が強い為、縄張りも
広範囲ではありますが······
民衆には、立ち入り禁止区域として
厳重に呼び掛けております。
その効果もあって、
目立った事案は上がっておりません。
ですが······大陸では
“奴ら”の生え変わった牙や爪、
脱皮した外皮が、高額で
取り引きされております。
狙って侵入する、命知らずがいるのも事実。
港町で検問していますが······
掻い潜られ、食い止めきれない現状が
あります。」
そんな輩には。
俺たちのように、
“カフ・ドランドー”の破格な強さを
身に沁みて、味わえばいいのだが。
「引き続き、監視を頼む。」
「御意にございます。」
こちらが不用意に踏み込まない限り。
“奴ら”は、襲ってくることはない。
だが。
人を脅威だと、捉えてしまったら。
何が起こるか分からない。
「トウマさま。私共は、シェライア様が
お越しになられましたら、
強化訓練に入ります。」
「ああ。」
表立って旅立った俺を、隠れ蓑に。
あいつは、きっと。
楽しみながらここへ、
やって来ているに違いない。
あまりにも、目に浮かび過ぎて。
思わず綻ぶ。
「······どうなさいましたか?」
それを目にした将軍は、首を傾げる。
「いや。何でもない。」
旅の目的の半分は。
あいつの願いを、成就させる為の時間だ。
そして。
少なくとも、俺も。
ただ。あの男の行方が、気になる。
ランドーラ国と、どう繋がっているのかも。
何が目的で、
シェライアを攫おうとしたのか。
誇示する為なのか。それとも。
いずれにせよ、
見極めなくてはならない。
ヒュオォォォ······
微かに、唸るような風の音が
耳に届く。
外の世界には。
あいつも出会ったことがない、
様々な精霊が棲んでいるだろう。
それらと会話する光景は、いつも
不思議でしかない。
今となっては、慣れてしまったが。
ざわざわと、木々たちが揺れた。
それを目にして、微かに
胸騒ぎを覚える。
ただの風には、違いない。
しかし。これが、虫の知らせだとしたら。
そう考えてしまった事に、呆れる。
少し離れただけで、これか。
我ながら、過保護にも程がある。
護衛が付いている。
心配は、いらない。
······
早く来い、シェライア。
楽しいからって、道草食うなよ。
彼の心配は、当たらずとも遠からず。
野草とか花とか、
豊富に生えているのを目にすると。
彼女は立ち止まり、嬉しそうに観察する。
その度に、ヒルドとカデは
足を止めざるを得ず、控える。
先を急ぎましょう、など
口にできるはずもなく。
只々、彼女が気の向くままに
過ぎていった。




