Cr2-18
彼女が促すままに、
モルドワイルとアーレシアは
部屋へ踏み入れる。
二人の手中にある物に目を向け、首を傾げた。
「それ、どうしたの?」
「私たちからの贈り物だ。」
「えっ?······もしかして、作ったの?」
モルドワイルから渡された物は、
ブーツである。
生地は革のように、しっかりしているが。
手触りは絹のように、心地好い。
「不思議っ。とても軽いわっ。」
「少しでも、歩くのが楽になるようにな。」
「履き心地も良さそう。」
「ははっ。気に入ってもらえて良かった。」
喜ぶ娘の姿を見て、
笑顔にならない父親はいない。
「私からは、これよ。」
アーレシアが、にこやかに手にする物は。
見たことがない細長い形状で、
用途が分からなかった。
腕一本くらいの長さで、
綺麗な薄紫色の生地で覆われている。
「?······それ、何?」
「そうね。突発的に雨が降った時とか、
日差しが強い時に使うといいわ。
こうして開いて、頭上に翳すの。」
我々の言葉では、“傘”というものである。
「軽く折り畳めるようにしたから、
荷袋にも入るでしょう?」
巫女である母親の創造力は、斬新な上に
機能的。そして、芸術性が高い。
一族の中でも、群を抜いている。
手渡されたそれを眺めて、彼女は
目を輝かせた。
「これ······すごいわ。」
「ふふっ。是非使ってちょうだい。」
「ええ。二人とも、ありがとう。」
貰った物を大事に抱えて、微笑む。
快く送り出してくれる事に、感謝しかない。
「くれぐれも、気をつけてな。
何か異常があれば、すぐに精霊を通じて
報せること。良いな?」
「はい。お父さま。」
「私たちと精霊たちの絆は強く、深いわ。
大陸に渡ったとしても······必ず、
助けになってくれる。
トウマとともに、乗り越えるのよ。」
「はい。お母さま。」
両親の言葉を、しっかり胸に刻む。
「この旅が、一族にとって
良い転機となるように。学んで、
意思を示して、しっかり歩いていくわ。」
力強く紡ぐ、その姿を。
温かく映して、優しく綻んだ。
完全に、心配を拭うことはできないが。
一回り大きく成長して帰ってくる姿を、
想像して待つのも。
親としての楽しみであると、噛み締めながら。
一方、トウマも同じくして。
クラマとレイラに、
労いの言葉と餞別を渡されていた。
彼女たちとは違う、緊張感を持って。
「道中、細心の注意を払え。」
「心得ております。」
「シェライア様に、
不自由な思いをさせないようにね。」
「十二分に。」
彼が城を離れ、旅に出る事は勿論。
国の橋渡しをするという、
重要な役を担うというのは初めてである。
息子の門出とはいえ、親心として
心配は隠せない。
その色を感じ取り、彼は解すように
柔らかく微笑んだ。
「父上。母上。帰還した際は、今よりも
成長した姿を見せることが
出来ると思います。
どうか、その時を心待ちにしてください。」
逞しく、堂々とした発言に。
二人は、微笑まずにはいられない。
「待っておるぞ。」
「ええ。楽しみに待っているわ。」
それぞれの親たちが、
子どもたちの立派な心構えを見据えて。
旅立ちの時を、迎える。




