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Cr2-16


風を起こす程の一振りを、

ミストランは紙一重で躱す。


その後に反撃が来る事を

察知しているトウマは、後方へ身を引いた。


予測通りに将軍は踏み込むと、

素早く振り抜く。



手加減など、していない。


チリチリと、躱した部分が熱い。



それが、彼の戦意を高揚させる。




カン!カン!と、激しくぶつかり合う度に。


観戦する皆も、熱くなっていく。




「今日は、いつになく力強いですな!

 何か、思うところがおありですかな?」


「旅に出る前に、是非貴殿を

 打ち負かしてやりたいと思っただけだ。」


「ハハハッ!それは立派な心意気!」




それくらいでなくては。


護れるものも、護れない。




「ですが!脇が、甘くなられておりますぞ!」



隙をつく一突きに、かろうじて身を捩る。

だが、一息つく暇を与えない斬り込みが

次々に襲った。


躱すだけで、精一杯である。



カンッ!と将軍の剣を弾き、距離を置くと。

彼は、構え直す。



「身を燃やしても、頭は冷静に。

 それを、有り余る若さゆえに

 邪魔をします。」



助言を与えるように紡ぐ

将軍の息は、少しも乱れていない。



「心を平静に。保つことができれば

 私などすぐに、打ち負かすことが

 できましょう。」



聞き入れながら、乱れた息を整える。



「貴方さまには、それができる。

 私よりも、ずっと精度が高く。

 ······年功の戯言は、ここまでに致します。」




大剣の柄を握り直す動作は。


決着を付けようと、技を繰り出す証。




彼は、すぅ、と細く息を吸い。止める。





「はっ!!」




掛け声とともに、将軍は

素早く踏み込んでくる。



大きく、鋭い一振りが来る。




「ふんっ!!」




見極めろ。


僅かな、一筋を。




ミストランの鋭い一振りは、

トウマの長い髪先を掠める。



切れた数本が

ひらひらと舞う場所に、姿はなく。



カンっ!!と、金属のぶつかる音が

大きく響く。




空中で高速に回り、地へ突き刺さる大剣。



一部始終を目の当たりにした騎士たちは、

湧き上がる興奮を露わにした。



「お見事ですっ!!」


「素晴らしいっ!!」




歓声が上がる中、直も膝をついて

構えを解かない彼は、肩で息をしている。



じぃんと、痺れた手を振りながら

ミストランは、満面の笑みを浮かべて

彼に歩み寄った。



「流石はトウマさま。

 遂に、打ち勝ちましたな。」




差し伸べられた、多数の傷痕と

豆ができた大きな手を。


じわじわ湧き上がる嬉しさを

噛み締めながら、トウマは手袋を取って

力強く握った。



「勝ったとは、思っていない。」


「いえいえ。もう、私が教えられることは

 ありません。」



支えられて立ち上がると、

額から流れる汗を拭いながら告げる。



「貴殿は、息を乱していない。」




剣を落とすまで。

手合わせとしては、成立しているが。


この師匠の底力は、少しも引き出せていない。



「実戦は、この後も続く。」


「ハハハッ。賢いお方だ。

 その心構えは、生死を分けまする。

 これからも、貴方さまのご武運を

 心よりお祈り申し上げます。」




今まで、本当に。

大事なことを教えてもらった。




「これからも、手合わせ願うぞ。」


「はい。いつでも、何なりと。」




これからも、突き進む。



大事なものを、護る為に。





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